「交通系ICカードやめます」熊本の公共交通、未来どうなるのか? 利便性vsコスト問題、全国交通系カード撤退の背景と拭えぬ不安

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熊本県内の公共交通で利用されている全国交通系ICカードが廃止され、代わりにクレジットカード決済が導入される方針が明らかになった。これにより、利便性が地域外の利用者にとっては課題となる。

熊本の交通革命

路線バスのイメージ(画像:写真AC)
路線バスのイメージ(画像:写真AC)

 その後も協議は進められたものの、当初は全国相互利用を支持していた熊本県も導入費用が高額だったため、地域限定型カードを容認する形に転換。2015年4月に「くまモんのICカード」がスタートすることになった。

 この時点で「くまモンのICカード」を導入した交通機関では全国交通系カードに対応していなかったため、県外からの利用者にとっては不便な状況が続いていた。

 この問題を解消するため、2016年に前述の通り補助金制度を利用して「くまモンのICカード」でも、全国交通系カードは片利用できるようシステムを改修した。これにより、全国相互利用機能が維持され、県民や観光客の利便性が大幅に向上することとなった。

 だが、更新時期を迎え、かつては全国交通系カードを推進していた熊本市交通局も含めて撤退を決断することになったわけである。では、代替とされているクレジットカード決済によるシステムの利便性はどうだろうか。熊本県では、国内外からの観光客増加に加え、世界的な半導体メーカーTSMCの進出が決定するなど、今後さらなる交流人口の拡大が見込まれている。

 こうしたなか、国外から熊本を訪れる人にとっては、「くまモンのICカード」を新たに購入するよりも、すでに持っているクレジットカードで決済できる方が利便性が高い。このように、クレジットカードのタッチ決済は、特に外国からの利用者にとっては利便性が高いといえる。

 しかし、国内の利用者にとっては、メリットは少ない。今回、撤退が決断できた理由としては、県内では「くまモンのICカード」のシェアが圧倒的なことが挙げられる。NHKの報道によれば、2023年度の路線バスと電車の利用者のうち「くまモンのICカード」の利用者は51%を占めるとしている。この地域限定型カードの利用者の多さが、撤退の決定打になったといえるだろう。

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