子どもを事故から守れ! 「スクールバス」導入に高まる期待も、立ちふさがる現実的課題とは

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公共交通機関が少ない地方で、バスは地域社会と人を繋げる欠かせないものだ。財政圧迫を最小限に留める対策として、路線バスの活用が現実的かもしれない。

地域差があるスクールバスの浸透度

スクールバスの運営形態。文部科学省「国内におけるスクールバス活用状況等調査報告」より(画像:文部科学省)
スクールバスの運営形態。文部科学省「国内におけるスクールバス活用状況等調査報告」より(画像:文部科学省)

 それゆえ、スクールバス導入の声は日に日に高まり、2021年夏には自由民主党の議員連盟も発足している。ただ、地域によって課題はさまざまで、一斉導入は容易ではない。

 文部科学省は2005(平成17)年度、「登下校時における児童生徒の安全確保のための路線バス等の活用について」を各自治体の教育委員会に通知。それから15年の歳月を経て、バス活用の動きは統廃合が進み、学区が急拡大した地域やへき地で進んでいる。

 2008年3月に発表された「国内におけるスクールバス活用状況等調査報告」には、全国の62.7%の自治体で、公立小学校児童、中学校生徒の通学にスクールバスが導入されているとある。

 9割以上の自治体でスクールバスを導入しているのは

・新潟県
・山形県
・青森県
・富山県
・北海道
・岩手県
・島根県

と豪雪地帯が中心で、逆に導入率が低いのは

・東京都
・神奈川県
・埼玉県
・福岡県
・愛知県

と首都圏や大都市を持つ自治体だ。そんなこともあり、都市部の公立学校はスクールバスと無縁のように見える。

都心でも走っていた公立小バス

中央区のコミュニティーバス「江戸バス」(画像:写真AC)
中央区のコミュニティーバス「江戸バス」(画像:写真AC)

 しかし、東京都心でもスクールバスは運行されている。中央区には公立小学校が16校あり、施設に余裕のある学校を対象に学校選択制を実施している。入学から卒業まで通学することが前提で、2022年度は中央区内在住の新1年生を対象に5校が認定されている。

 他の学区から通学する場合でも、児童が自力で登下校できることを求めているが、同じ中央区内でも月島地域から距離のある城東小学校、常盤小学校、阪本小学校への交通手段の確保として無料のスクールバスが運行されている。

 2009(平成21)年に運行を開始した中央区のコミュニティーバス「江戸バス」の導入検討時、スクールバスを兼ねる案もあったが、結果として独立したものとなった。

 スクールバスは、大まかに次のふたつに分けられる。

・スクールバス専用車
・既存の路線バス

 公立小学校のスクールバスは国からの助成金で運行され、不足分は自治体が負担する。そのため、児童の保護者の負担はない。しかし全国的に導入する場合、助成金があっても自治体の負担増は避けられない。

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