大阪万博「シャトルバス運転手」が全然集まらないのは、やはり“民営化の呪い”なのか?

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2025年の大阪・関西万博が近づくにつれ、万博協会がシャトルバスの運転手の確保に苦労している。府内のバス会社への協力要請も思うように進まず、万博輸送計画の大きな障害となっている。

給与水準横並び

阪急バス(画像:写真AC)
阪急バス(画像:写真AC)

 現在、運転手確保のために新たな人材募集も行われている。

 大阪メトロでは「万博バスドライバー超募集!」として車内広告を実施するなど、大々的な募集を行って話題になっている。その待遇面は、どうだろうか。同社が行っている募集は臨時・契約・正社員の三種の雇用形態。給与はいずれも

「月収30万円以上も可能(基本給+諸手当を含む)」

となっている。大型二種免許取得費用も一定条件下で会社が負担するなど、一見すると手厚い待遇に見える。しかし、この正社員採用の給与水準を他社と比較すると、それほど大きな優位性は見られない。ほかの大阪府内で路線バスを運行する会社の募集広告を見てみよう。

 阪急バスの初任給は月額20万円以上で、別途「時間外手当、休日出勤手当、深夜手当」など各種手当が支給され、賞与も年3回、計4か月分以上が支給される。一定条件で二種免許取得費用も支給される。

 ほかの会社も見てみたが、南海ウイングバス泉南でも、月給19万6000円以上に加え、一律手当を含めた月収例は約30万円としている。つまり、どの会社も諸手当を含めた給与は、月額30万円程度でほぼ“横並び”だと考えられる。「万博バスドライバー超募集!」の広告を見て、転職を決意する人も想像できない。

 加えて、阪急バスや南海ウイングバス泉南は入社時から正社員採用することを銘打っているのに対して、大阪シティバスの「転籍」には条件があり

「万博開催期間終了後、路線バス以外の運行業務をご担当頂く可能性がある」
「万博開催期間終了後の所属は、今後の当社グループ組織改編により変更となる可能性がある」

としており、いささか将来性に不安も感じる。このように、インセンティブのない状況では、人材の確保は困難だろう。

 大阪市営バスは、2018年に民営化された。その背景には、長年にわたる経営難があった。バス事業会計は2012年度まで30年連続の赤字で、2015年度末時点では794億円もの累積赤字を抱えていたのだ(『朝日新聞』2017年3月28日付夕刊)。

 ここまで見てきたように、大阪万博のシャトルバス運転手不足問題の根底には、輸送計画そのものに無理があったのではないかという指摘ができる。

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