自動車排除の流れは加速する? コロナ禍で変化する道路行政、これからは「歩行者の時代」到来か

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公共施設への公開空地導入で、飲食店の需要が急拡大している。飲食店内での食事が密とされて忌避される風潮が高まったため。行政は新たにオープンスペースを創出する政策を検討している。

コロナ禍で存在感を増した移動販売車

都内の歩行者天国(画像:写真AC)
都内の歩行者天国(画像:写真AC)

 2020年初頭から感染が拡大した新型コロナウイルスは、2年以上の歳月を経ても完全に収束していない。それどころか、2021年末からオミクロン株による第6波が襲来。コロナ禍は長期化の様相を呈している。私たちの健康はコロナによって脅かされるが、他方で経済的な損失も計り知れない。特に、飲食業のダメージは大きい。繰り返し発出される緊急事態宣言やまん延防止等重点措置により、多くの飲食店は廃業にまで追い込まれている。

 コロナという未曾有(みぞう)の危機に直面し、それまで客を呼び込むというスタイルで営業をつづけて飲食店は変化を求められた。その一端として、UberEatsをはじめとするデリバリーシステムが急拡大したことがあげられる。

 デリバリーシステムにより、多くの飲食店は自宅に飲食物を届けることが可能になった。これまでの飲食店は店内で飲食してもらう以外に、テイクアウトという方法があった。しかし、テイクアウトは客に店まで足を運んでもらわなければならない。

 UberEatsをはじめとするデリバリーサービスは、利用者が来店する必要がない。手数料や配達員の配達・交通マナーや事故の責任所在といった問題は抱えながらもデリバリー需要が急増している現状によって飲食店が救われているという側面があることも否めない。
 コロナ禍によりデリバリーサービスは市民権を得たが、そうした社会的な動きと連動するかのようにキッチンカーや移動販売車の存在感も増している。

「公開空地」の誕生

総合設計制度と公開空地(画像:国土交通省)
総合設計制度と公開空地(画像:国土交通省)

 キッチンカーや移動販売車などが目立つようになった背景には、1971(昭和46)年に創設された総合設計制度がある。同制度の創設により、「公開空地」という概念が誕生したからだ。

 公開空地とは、民間の敷地を一般的に開放した区画を指す。公開空地によって、いわゆる私有地を公園的に利用できるようになったわけだが、1971年以降も法改正が繰り返された。それにより、多くの大規模商業施設で公開空地が導入されていく。

 従来、商業施設が資産価値を高めるためには敷地面積を最大限に活用し、少しでも多く店舗を入れられるように建物を大きく設計する。公開空地は、商業店舗やオフィスビルにとって無駄な空間でしかなかなかった。

 しかし、公園整備は行政に課された責務といえるが、それには莫大(ばくだい)な費用が必要になる。公開空地を奨励するべく、政府は商業店舗やオフィスビルに公開空地を設けることで、「容積率」のアップというメリットを付与した。これにより、公開空地は爆発的に増えていく。

 容積率とは、敷地面積に対して建物の延べ床面積の割合のことを指す。一般的に容積率が高ければ高いほど、高いビルを建てることが可能になる。東京・大阪の都心部に高層ビルが多いのは、都心部の容積率が高く設定されているからだ。

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