北陸新幹線「大阪延伸」 代替“米原ルート”は事業費7割オトクも、実現困難! いったいなぜなのか

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北陸新幹線の大阪延伸のめどが立たないなか、石川県や富山県では米原ルートの再検討を求める声が出始めている。しかし、ルートが変更されたとしても多くの問題が残っている。

東海道新幹線乗り入れは困難

新幹線延伸を待つ小浜市の中心商店街(画像:高田泰)
新幹線延伸を待つ小浜市の中心商店街(画像:高田泰)

 米原ルートに方針転換したとしても、克服しなければならない課題が山積している。東海道新幹線は過密ダイヤで、北陸新幹線の乗り入れが難しい。乗り入れができなければ、乗り換え場所が敦賀から米原に変わるだけだ。

 リニア中央新幹線が大阪まで開通すると、東海道新幹線の過密ダイヤに余裕ができる可能性があるが、リニアの工事に遅れが各地で出ている。大阪延伸時期は政府が6月の骨太の方針で明示することを検討する「最速2037年」が難しくなりつつある。

 並行在来線の問題も頭が痛い。JR西日本は過去に特急列車が走る湖西線が小浜・京都ルートの並行在来線になる可能性があることを示唆し、滋賀県の反発を招いた。滋賀県は小浜・京都ルートに同意しているが、並行在来線の話を持ち出されれば態度を硬化しかねない。

 小浜市など若狭地方の反発も予想される。1973(昭和48)年に決定した北陸新幹線の整備計画では、小浜市付近を通ることが示されている。さらに、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が4月末、小浜市の東小浜駅周辺に新駅の設置方針を打ち出したばかり。小浜市の2024年度予算には新駅周辺の街づくり計画調査事業費約600万円が計上されている。

 若狭地方は国策に従い、美浜、大飯、高浜の3原発を受け入れた。そこには

「いつか新幹線が来る」

という思いで苦渋の選択をした側面が見える。小浜市新幹線交通まちづくり課は

「長年の苦労が実って決まったことをそう簡単にあきらめられるはずがない」

と米原ルートに拒否反応を示した。

 JR西日本からすると米原ルートに“うまみ”が少ない。東海道新幹線はJR東海の管轄で、JR西日本の収益となるのは敦賀~米原間だけになる。もともと小浜ルートを提唱したのもJR西日本。すんなり受け入れそうな雰囲気は感じられない。

 小浜・京都ルートは開通までどれだけの時間がかかるかわからない状態だが、米原ルートもこれらすべての難題をひとつひとつ片づけようとすれば、相当な時間が必要になりそう。北陸新幹線の大阪延伸は袋小路に迷い込んでいる。

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