“AIひき逃げ”が多発? クルマの自動運転化が導く“無責任社会”という名の未来

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自動運転には多くの未解決の問題が残っている。例えば、「自動運転」中の事故は誰が責任を負うのか。

人間の認識を代替できるか

路面表示(画像:上岡直見)
路面表示(画像:上岡直見)

 ドライバーがふだん何気なく行っている動作でも、それを機械で代替することは簡単ではない。センサーは進化しているが、センサー自体は

「データを送るだけ」

であって、それが何であるか、どうすべきかの判断はできない。それはAI側の問題になる。

 人間は欠損した情報を無意識のうちに補って全体を判断できるが、上の画像の状況ではどうだろうか。もともとは右方向を示す矢印だが、摩滅していて判読できない。またかガードレールの影が重なってセンターラインにも見える。

 AIが影をセンターラインと認識すれば車がセンターラインに衝突する可能性もある。自動運転の最終ゴールは、どのような状況でも、いつでも完全自動運転が可能となる「レベル5」であるが、この例の幹線道路でさえこの状態では、「レベル5」のあらゆる状況での自動運転のハードルは高い。

AIは何を「学習」するか

ドライバー向け会員制サービス「タイムズクラブ」の会員を対象に実施した「完全自動運転車」に関するアンケート結果。有効回答者数5342人(画像:パーク24)
ドライバー向け会員制サービス「タイムズクラブ」の会員を対象に実施した「完全自動運転車」に関するアンケート結果。有効回答者数5342人(画像:パーク24)

 人間があらゆるケースを想定して

「こういう場合はこうする」

という解答をあらかじめAIに組み込んでおくのは不可能に近い。このため「深層学習」の技術が提案されている。深層学習とは、人間が解答を用意するのではなく、AIが多数の事例を集積・抽出して「学習」する技術である。

 しかし自動運転のAIは何を学習するだろうか。道路交通法では、横断歩道で「横断しようとする歩行者等があるとき」は車両は一時停止の義務がある。しかし日本では実態として信号のない横断歩道では車が止まらないことが多く、なかには

「クラクションで歩行者を足止めして通過するドライバー」

さえ珍しくない。歩行者が危険を感じて横断をためらうとドライバー側ではますます「横断する意図がない」と判断する。AIが多数の事例を集積してゆくほど、こうした悪慣行を「学習」する可能性がある。

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