JAL・ANAはかつて“特権階級”だった! 市場激化で「就職先」地位の低下も、女子学生からは圧倒的支持のワケ
航空会社の人気はその時々の状況に大きく左右され、就職における「社会的地位」は総じて低下する傾向にあると筆者は指摘する。いったいなぜか。
需要回復とレジリエンスの必要性

こうした要因に加え、近年、航空業界への就職人気が低迷しているもうひとつの理由は、
「イベントリスクに脆弱(ぜいじゃく)である」
ことが露呈しているからだ。イベントリスクとは、事前の予期せぬ出来事により価値が大きく損なわれるリスクを指す。
2001年の米国同時多発テロでは、航空機が直接のテロ手段となり、国際線は対策に追われ完全にまひした。2008年のリーマンショックもJALの破綻を招いた大きな要因である(2010年1月、JALは会社更生法の適用を申請し、2兆3000億円という戦後最大の負債を抱えて事実上倒産。7000億円近い公的資金が投入された)。
そして何よりもコロナ禍の影響がある。国際線・国内線の長期にわたる厳しい渡航制限の結果、航空業界は壊滅的な打撃を受け、リストラが相次いだ。コロナ禍が一段落してからは、旅行需要の急速な回復が航空業界にとって強い追い風となっているが、これがいつまで続くかは不透明感が強い。そのため、
「レジリエンス(回復力)の強化」
が叫ばれている。収益性の高いビジネス需要については、コロナ禍の際にテレワークやオンライン会議の普及により、将来性はあまり期待できないと航空会社自身が語っている。
これに加えて国内線では、人口減少による需要の減少も懸念されている。そのため、航空各社は近年、
「地方創生による需要創造」
に積極的に取り組んでいる。それに連動して、地方に社員を派遣したり、希望する社員に地方に住む機会を提供したりすることで、社員のモチベーションを高め、多様な働き方ができることを示そうとしている。
とはいえ、航空会社が地方創生の主役になれるかどうかは未知数だ。本当に地方創生やまちづくりに携わりたい学生は、大手不動産会社などのデベロッパーを志望するからだ。