南海トラフ地震を想定! 訓練重ねる日本初の災害医療支援船「パワーオブチェンジ」をご存じか
「パワーオブチェンジ」は、日本初の災害医療に特化した民間船だ。同船は「自己完結性」に重点を置き、迅速かつ安全な支援を目指している。国内外の災害医療支援の充実が期待される。
自動操船技術の期待

ソフト・ハード面の対策を紹介したでは、海上での災害医療支援を充実させるためには何が必要なのか。それは前述のとおりである。第一は、津波で沈没したと思われる船舶を避けることである。
地震により津波が発生した場合、本船を含む船は「沖出し」という難しい判断を迫られる。沖出しとは、津波が発生したときに沖合に停泊して津波の被害を防ぐことだが、船は津波が近づいてくる方へ向かうことになる。これが危険であることは間違いない。
海上保安庁は沖出しを禁止しているが、陸地への帰港時間、津波、水深、場所などさまざまな条件を考慮し、沖合への避難の方が安全と判断されれば、検討することもある。実際、東日本大震災では、宮城海上保安部の巡視船2隻が、津波到達予想時刻と巡航速度を考慮して沖出しか陸地への退避かを判断し、沖出しを避けて漂流・座礁した。
海路上に漂流船があれば人員が取り残されていないか、沈没船があればそれを避ける必要があり、海路の安全性が懸念される。
それだけに自動操船技術への期待は大きい。日本財団は自動操船技術の確立を目指し、無人船舶プロジェクト「MEGURI2040」の実証実験を重ねている。コスト面での懸念はあるが、技術の確立とドローンの活用などのソリューションにより、無人船舶の削減、人員削減、沖出しの迅速化が実現し、被災船の減少が期待できる。
上記は安全な海路の実現にもつながり、「救いたい。一秒でも早く、1人でも多く」というモットーの実現にもつながる。海路を利用した持続的かつ先進的な災害医療支援は、地震大国・日本にとって必要であり、このイノベーションは海外にも展開できるだろう。