南海トラフ地震を想定! 訓練重ねる日本初の災害医療支援船「パワーオブチェンジ」をご存じか

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「パワーオブチェンジ」は、日本初の災害医療に特化した民間船だ。同船は「自己完結性」に重点を置き、迅速かつ安全な支援を目指している。国内外の災害医療支援の充実が期待される。

医療支援の「洋上基地」

海上保安庁の主要巡視船の大きさ。比較画像(画像:海上保安庁)
海上保安庁の主要巡視船の大きさ。比較画像(画像:海上保安庁)

 ソフト面の対策や建造費を基金に寄付する対策は採られたが、本来の目的を達成するためにハード面はどのように改修されたのか。

 パワーオブチェンジの概要である。
・全長:68.00m
・幅:17.40m
・最大航続距離:6000マイル(約1万km、8ノット)
・最大搭載人員:49人
・総トン数:3453t

画像は海上保安庁の引用だが、大型飛行機ほどの大きさで、数十人を乗せることができるため、医療関係者を輸送する「洋上基地」として重要な役割を担っている。

 また、前述のいず(全長110m、全幅15m、3690トン)に対し、全長68m、全幅17.4mであり、調査船の名残か横に長い形状をしている。海上保安庁のPL級とは「Patrol Large」の略称で、巡視船の分類ではヘリコプター搭載可能な大型に分類される。つまり、この船のハード面の特徴は

「居住性能を備えた、洋上基地でヘリコプターが運用可能な規模の船」

といえる。実際、国際規格のヘリポートが装備されており、沿岸からヘリコプターを飛ばして災害医療支援を行うことを想定している。

 なぜ、海上での災害医療支援に「航空支援」を前提とした船舶運用が必要なのか。それは海面の隆起や津波により港が破壊され、接岸困難な状況に対応するためだ。

 例えば、能登半島地震の際には、同法人が所有する別の船舶で救援物資を輸送した。しかし、海面上昇が確認され、津波で沈没したとされる船を避けながら寄港した。したがって、接岸が困難な状況を想定し、ヘリコプターの離着陸が可能な災害医療船を運航することは理にかなっている。

 また、船内には49人分の部屋だけでなく、物資や燃料の備蓄など、広い汎用(はんよう)スペースと生活インフラを備えている。「自己完結性」が不可欠な災害支援において、居住、輸送、食料、エネルギー、通信設備のスペースなどを備えた移動式船舶が果たす役割は大きい。

 つまり、災害時に陸路が寸断されることを背景に、物資や人員を海上輸送する必要があり、接岸が困難な状況でも対応できるよう、ヘリポートや自己完結性が保証された船舶が必要とされるのだ。

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