旅客・貨物需要で絶好調の「フェリー」 しかし航路数は20年で「約3割」も廃止されていた!【短期連載】海洋国家にっぽんのフェリー進化論(1)

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現在、海外からのインバウンド旅客需要や「2024年問題」により貨物需要が期待されている。一方で、少子高齢化による人手不足、定期旅客数の減少など逆風も吹いている。

国内フェリーの役割と地域経済への貢献

2022年に就航した新船「あおい」(画像:ジャンボフェリー)
2022年に就航した新船「あおい」(画像:ジャンボフェリー)

 ひとつの船で旅客と車両を同時に運べるフェリーは、地域経済にとって欠かせない輸送モードだ。ここで、自動車の航送台数の推移をみてみよう(日本旅客船協会のデータより)。

・2000年:乗用車・その他10591(千台)トラック5559(千台)
・2010年:乗用車・その他7659(千台)トラック3922(千台)
・2020年:乗用車・その他5639(千台)トラック3552(千台)

 2008(平成20)年に

「高速道路の割引」

が始まったことにより、2010年の実績は2000年と比較して大幅に落ち込んだ。しかしながら2010年以降は、コロナ禍を除き乗用車・その他で7000~8000(千台)トラックで3500~4000(千台)で推移しており、フェリー需要の堅さがうかがえる。直近2022年の長距離フェリーの輸送実績でいえば(国土交通省のデータより)、

・乗用車・その他(台数):対前年32.2%
・トラック(台数):対前年0.8%
・旅客輸送人員:対前年48.3%

増加しており、コロナ禍が明けてから旅客、自動車ともに戻ってきたといえる。

 定性的な面では、フェリーは2地点を短距離で結ぶバイパス機能はもちろん、都市圏と地方都市間における一時産品や工業製品の輸送を担っている。また離島航路では、人や生活物資移動手段として欠かせないのはいうまでもない。

 さらに災害で陸路が寸断されたときは、フェリーが緊急物資や代替交通手段として活躍してきた。2018年7月の西日本豪雨災害では、愛媛と中国地方を結ぶ輸送台数が最大で13割、九州地方と四国地方では最大6割増加した。フェリーは、平時の輸送はもちろん、

「異常時のバックアップ機能」

としても欠かせないといってもいい。

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