自動車メーカーに潜む「尖閣リスク」 南シナ海では中国海警局の暴力が横行、安全保障問題だけとして捉えてはいけないワケ
日本企業の中国における日常的なビジネスは、中長期的に継続するだろう。しかし、中国に進出している企業、特に大手自動車メーカーが注意すべき安全保障上のリスクがある。それが「尖閣リスク」である。
日中衝突と経済影響
尖閣諸島では日中のにらみ合いの神経戦が続いているが、南シナ海で横行する暴力が尖閣諸島で起こらないという保障はない。
海上保安庁の巡視船の性能や能力を考慮すれば、フィリピン船やベトナム船のような被害に遭う可能性は高くはないだろうが、小規模な衝突が起こったとしても、それによって日中間で政治的な緊張が一気に高まる恐れがある。
2010(平成22)年9月、尖閣諸島沖で中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突する事件が発生した際、日中間では政治的な緊張が高まり、中国側は日本向けのレアアースの輸出を停止した。
また、2012年9月、日本政府が尖閣諸島の国有化を発表した際、中国国内では反日デモが各地で発生した。抗議デモは北京や上海など50都市以上に拡大し、青島にあるトヨタ自動車の販売店は放火を受け全焼した。
ほかにも日系企業の工場や店舗、コンビニエンスストアなどで破壊行為や略奪行為が横行し、中国に進出する日本企業は大きな被害を負った。2012年のような事態が再び発生してはならないが、今日の日中関係や米中対立などの地政学リスクは、2012年の時より深刻であると思われる。