民営化の公約「明るく親切な窓口」は結局、守られたのか?【短期連載】国鉄解体 自民党「1986年意見広告」を問う(2)
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旅行の楽しさと接客の重要性
ところで、JRも単に出札窓口を削減して終わりにしているばかりではない。
例えば、中央本線阿佐ヶ谷駅のみどりの窓口の跡地には、クリニックが営業している。こうした生活に密着したテナントを誘致することで、駅の魅力を維持することが可能となる。JR各社は手探りながらも、新たなサービス創出に向けて努力している。
とはいえ、やはり出札窓口の削減は、乗客にとっては利便性低下以外の何ものでもない。駅は第一義的には乗客が利用する施設である。JR各社には、このことを忘れないでほしいと願う。
また、出札窓口の削減は、旅行の楽しさを低下させかねない。九州訪問中に鹿児島本線二日市駅を利用したが、みどりの窓口に乗客がいなかったため、係員から乗車券・特急券を購入した。券売機と異なりボタンを操作する必要がなく、精神的にも楽であった。大変丁寧な接客にもいたく感動した。係員が乗客と相談しながらきっぷを発券する出札窓口は、顧客との重要なタッチポイント(接点)でもある。
今回の九州訪問では往復新幹線利用だったが、九州や四国、北海道など、東京から遠隔の地域を訪問する際は航空便を利用することが多い。航空便を選ぶ大きな要因としては、フライトアテンダント(FA)の親切丁寧な接客がある。FAの接客が楽しみとなり、次回も航空便を利用したいとの思いにつながっている。
旅行中に親切丁寧な接客を受けると、それだけで旅行の楽しさは倍増する。筆者に限っていえば、搭乗頻度は年に数回程度ではあるが、航空会社のリピーターになっている。
一方、JRグループの合理化を責めてばかりでは問題は解決しないのも確かだ。JR各社は人口減少を見据え、利益確保や人手不足などへの対応策として、合理化を進めている。費用削減を通じて利益を確保することができれば、鉄道ネットワークを維持するための原資に充てることもできる。