民営化の公約「明るく親切な窓口」は結局、守られたのか?【短期連載】国鉄解体 自民党「1986年意見広告」を問う(2)

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株式会社であるJR各社は、利益を上げ、株主価値を高めるという「使命」を果たし続けることを株主から求められている。国鉄民営化前に約束した公約「明るく、親切な窓口に変身します。」は守られたのか。

JRグループの合理化と安全対策

ホーム係員無配置の九州新幹線新大牟田駅(画像:大塚良治)
ホーム係員無配置の九州新幹線新大牟田駅(画像:大塚良治)

 JRグループに話を戻す。

 JRグループの合理化は、出札窓口削減に止まらない。JR九州は新幹線の多くの駅で、ホーム係員を配置していない。同社は

「鉄道ネットワーク維持に向けた業務効率化の一環として、2016年4月から新玉名駅でホーム係員無配置を開始した。現在、九州新幹線では新鳥栖・熊本・鹿児島中央以外の8駅のJR九州管理駅でホーム係員無配置となっている。西九州新幹線では、事前に設備整備等を通じて十分な安全対策を施して、当初からホーム係員無配置としている。新幹線ホーム係員無配置駅では車掌がホームドアの開閉作業を行っている」(広報部)

と説明しつつ、

「当社管理の新幹線全駅に、ホーム柵の操作ができる係員を配置しており、通常時は窓口などで業務に当たっている係員が異常時に即応できるようにしている。安心してご利用いただきたい」(同)

と安全性を強調する。

 JR九州が新幹線ホーム係員無配置を検討した時期は、同社が株式上場の準備を進めていた時期に重なる。JR九州にとって、上場に備えて利益を確保する必要性がとりわけ高かった時期であるが、新幹線ホームも聖域とせずに合理化を検討・実行したのは、赤字路線を数多く抱え、費用削減が急務の同社としては、ある意味自然な流れだったのかもしれない。

 新幹線を運営するJR九州以外の各社(北海道・東日本・東海・西日本)の広報担当部門にも、新幹線駅ホーム係員の配置状況を問い合わせた。その結果、全社から新幹線全駅にホーム係員を配置しているとの回答を得た。

 それでも、全体的な傾向としては、JRグループでは、無人駅の増加も相まって、

「係員と顧客の接点が次々と切断されている」

現状がある。したがって、上記の公約は親切な係員が増えたという点では実現できているが、出札窓口廃止や無人駅増加などでそもそも接客を行う機会が減少しており、公約としては完全に守られているとはいえないとの評価にならざるを得ない。

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