電車トラブルが起きると、ネット民がいつも「駅員の味方」をするワケ

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駅員は決して「上の存在」ではない。安易な「従業員憑依」の姿勢ではなく、駅員をパートナーとして尊重し、協力していくことが何よりも大切だ。

サービス業における従業員への要求

駅(画像:写真AC)
駅(画像:写真AC)

 なぜ駅員は乗客よりも「格上の存在」だと誤解されがちなのだろうか。その理由は大きく分けて三つある。

 第一に、駅員の業務上の立場だ。彼らは、切符の確認や安全の確保、トラブルの防止など、乗客の行動を常にチェックする役割を担っている。つまり、乗客に対して「指示」を出す権限を持っている。こうした「監視」と「指導」の役割が、駅員を乗客より「格上の存在」に見せてしまう。

 第二に、駅員が身につける制服の影響である。鉄道会社の制服を着た駅員は、乗客の目には「大企業の代表者」として映る。これが、駅員の権威をより高める効果を生んでいるのだ。「この人は、会社の方針に基づいて私たちを管理する立場にある」といった印象を持つ人も少なくないだろう。

 第三に、鉄道サービスを「お客さまと従業員」という単純な二項対立でしか捉えられない視点の存在である。この視点に立つと、「お客さまである自分は常に正しく、従業員は自分に奉仕すべき存在」という誤った認識を持ちがちだ。つまり、駅員を「格上であり、サービスを提供する立場」と見なした上で、ケアされるべき下位である自分の要求に応えるのは当然の義務だと思い込んでしまうのである。

 こうした現場の従業員を企業の代表者であり、ユーザーに満足いくサービスを常に提供し続けるプロフェッショナルでなくてはならないという思い込みは、あらゆる業種で見られる。特にサービス業においては、現場で直接顧客と向き合う末端の従業員に、過剰な要求や判断を求める傾向が顕著だ。

 一方で、SNSの普及によって、従業員の立場に立った発言が増えてきたことも事実だ。顧客からの理不尽な要求や、サービスに対する苦情に、従業員の立場から反論したり、同情を示したりする投稿が目立つようになってきた。

 従来メディアではあまり取り上げられることのなかった、現場の従業員の生の声を可視化したという点で意義深い。従来メディアではあまり取り上げられることのなかった、従業員の生の声に光が当てられるようになったのだ。

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