公道の嫌われ者? 日本で「電動キックボード」が普及しないワケ 便利さに見合わぬ道路事情とは
国内でも少しずつ認知度が高まっているものの、本格的な定着にはまだ時間が掛かりそうな「電動キックボード」。普及を阻むものは何か、仏パリとの比較から検証する。
実際に乗って感じた複数の難点
利用した電動キックボードは、時速15km以上で走行できない構造になっていたため、自動車との相対速度が大きく、車道を走るとヒヤリとする瞬間が多々あった。自動車だけでなく、自転車に抜かれることもたびたびあり、それらの進路を邪魔していると感じた。歩道を走る自転車を見て、不公平さを感じることもあった。
もちろん、丸の内という狭い範囲で1回試乗しただけで「東京では電動キックボードが使いにくい」と断じるつもりはない。そもそも筆者は今回初めて電動キックボードに乗ったので、その体験だけでは良し悪しは語れない。
ただ、丸の内は都内でも比較的条件がよい場所だ。少なくとも自転車での移動においては、不自由さを感じる人が少ないエリアと言える。丸の内の道路は直線状かつ格子状で見通しがよく、幅員が広い。自転車道がない代わりに、車道の路肩に自転車レーンが整備されており、ほとんどの歩道で自転車の走行が許されている(ただし歩行者優先)。
そのような恵まれた場所でも、筆者は、電動キックボードの使い勝手があまりよくないと感じた。新しいモビリティで街を移動する面白さは感じたものの、現時点では他人に東京での利用をお勧めする気にはならなかった。
もしこうした状況が今後も続き、電動キックボードが東京で定着しなかったら、それは残念なことだ。海外の主要都市が新しいモビリティの導入に積極的に取り組むなか、日本を代表する都市である東京で移動の選択肢が広がらなければ、日本だけが世界のモビリティ変革やSDGsの波に乗り遅れることになりかねないからだ。