公道の嫌われ者? 日本で「電動キックボード」が普及しないワケ 便利さに見合わぬ道路事情とは

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国内でも少しずつ認知度が高まっているものの、本格的な定着にはまだ時間が掛かりそうな「電動キックボード」。普及を阻むものは何か、仏パリとの比較から検証する。

「自転車ニーズ」が高まる影で

東京・丸の内にある自転車ナビマークと自転車レーン。写真のように路上駐車の車両でふさがれていることもある。(画像:川辺謙一)
東京・丸の内にある自転車ナビマークと自転車レーン。写真のように路上駐車の車両でふさがれていることもある。(画像:川辺謙一)

 このような東京でも、「東京2020大会」を機に自転車政策が加速し、自転車道や自転車レーン、駐輪場、レンタサイクルの整備が進んだ。欧州の自転車先進都市の刺激を受けただけでなく、訪日外国人観光客の増加にともない、自転車に対するニーズが高まると予想されたからだ。

 しかし、自転車が走りやすい環境は、パリほど整っていない。車道や歩道と分離した自転車道は、近年整備された一部の道路に存在するものの、都市全体で見ればまだめずらしい存在だ。車道の路肩に設けられた自転車レーンは、近年路面にマークが施され、わかりやすくなった。ただし、幅が狭い上に路上駐車の車両でふさがれていることも多く、走りやすいとは言えない。

 また、東京の道路でも、パリと同様に最高速度を時速30kmに制限した「ゾーン30」と称する速度規制は存在するが、それは一部の生活道路に限られている。このため、道路網全体で見れば、自動車と自転車の相対速度が大きく、自動車も自転車も互いに走りにくさを感じる区間が少なくない。

 東京だけでなく、日本では、自転車は原則として車道を走ることが法的に定められているのに対して、実際は歩道を走る自転車が少なからずある。自転車道が十分に整備できず、やむなく自転車の走行を許している歩道が多数存在するからだ。もちろん、自転車が車道を走行するのが危険で、歩道に逃げざるを得ない状況とも関係がある。

 このように東京は、パリとはちがい、自転車が走りやすい環境という下地が十分にできていない。電動キックボードは、法律上は原付と同じ扱いで歩道を走行できず、自転車よりも制限が多い。にもかかわらず、東京は電動キックボードの導入に踏み切った。

 筆者は、実際に東京駅前で電動キックボードをレンタルして丸の内のオフィス街を走り、その使い勝手があまりよくないと感じた。

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