「ママチャリの人」炎上を支える幼稚な“正義感” 実行部隊は“40万人に1人”というレアキャラっぷり、糾弾より交通ルールを守る環境づくりが先決だ
暴走する幼稚な“正義感”
ここで改めて、本質的な議論を脇に置いたまま、なぜ多くの人が安易にネットリンチに加担してしまうのかを考えてみたい。ネットユーザーの動向に詳しいフリーライターの渋井哲也氏は、次のように話す。
「炎上に参加する人の多くは、“正義感”からというより、単に面白がっているだけです。動画を投稿した人が本当に違反者を糾弾したいのであれば、警察に通報したはずです。しかし実際はそうせず、ただ面白半分で女性の動画を拡散した。しかも、その状況に乗じて現場に押しかけた人たちは、違反者を懲らしめるというより、単に炎上を楽しんでいるだけなのです」
つまり、
「逆走にイライラする」
「信号無視は論外」
といった批判的な意見の多くも、心からの義憤というより、炎上という“祭り”に加わるための方便にすぎないのだ。こうして本来議論すべき問題の核心がすり替えられ、表層的な非難に終始してしまっているわけである。
渋井氏の指摘は、この件に限らず、ネット炎上の大半が建設的な対話を欠いたまま拡大している実態を浮き彫りにしている。だからこそ、もう一度冷静に考えたい。
なお、ITメディアの記事(2023年6月29日配信)では、経済学者でネットメディア論の専門家である山口真一氏の調査を紹介している。最後に引用する。
「山口博士の調査によると、22件の炎上事件を分析したところ、Twitterでネガティブな書き込みをしている人は炎上事件1件につきネットユーザーの0.00025%。約40万人に1人の割合だった。特に規模が大きい炎上事件でも0.0125%にとどまったという。ほとんどの人はそもそも炎上事件について投稿していない」
“約40万人にひとり”の存在になった人たちへ。あなたの“正義感”は幼稚で空虚だ。過ちを犯さない人間などこの世に存在しない。次回から改めればいいだけだ。