「ママチャリの人」炎上を支える幼稚な“正義感” 実行部隊は“40万人に1人”というレアキャラっぷり、糾弾より交通ルールを守る環境づくりが先決だ

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X(旧ツイッター)に投稿された「ママチャリの逆走」動画が話題となった。確かに、その女性の行動は問題だったかもしれない。しかし、だからといって顔を晒し、個人を特定することが許されるわけではない。

交通法改正、自転車への厳罰

自転車道(画像:写真AC)
自転車道(画像:写真AC)

 では、いったいなぜこの動画がネットユーザーの“暗い感情”を刺激し、炎上を引き起こしたのか。自転車利用者のマナーの悪さに対する強い憤りがあったことは考えられる。

 2024年3月5日、政府は自転車の悪質な交通違反に対して青切符を交付し、反則金を課す道路交通法改正案を閣議決定した。これによって、自転車マナーの改善が期待されている。以前から自転車利用者のモラルの低さが指摘されていたなかで、厳罰化によって、ようやく事態が改善することが期待されている。

 これまでも、

・逆走
・信号無視
・スマートフォン操作

など、交通ルールを守らない自転車による危険行為は後を絶たなかった。警察庁の調べでは、2022年中に発生した自転車が関係する死亡・重傷事故7107件のうち、自転車乗用中の交通事故による死者の77.1%、負傷者の66.8%は、

「自転車側にも何らかの法令違反」

が認められている。この数字は、自転車のマナーがいかに危機的な状況のまま放置されてきたかを如実に物語っている。

 本来、自転車は「車両」の一種だ。そのため、自動車と同じように交通ルールを守る義務がある。例えば、車道の左側を通行すること、歩道を走る場合は車道寄りを徐行すること。そして何より、

「信号を守ること」

である。これらは自転車利用者なら誰もが知っているはずの基本ルールだ。しかし、そうしたマナーはおろそかにされているのが実情だ。

 自転車のマナー違反は、とき重大な事故につながる。例えば、炎上のきっかけとなった「逆走」は最も危険な行為のひとつだ。逆走がなぜ危険なのか。それは、クルマにとって

「対向車線から自転車が飛び出してくること」

が想定外だからだ。時速30kmで走行していたとしても、反応するまでの時間はわずかである。とっさの回避は極めて難しい。しかも、逆走自転車は信号の変わり目を狙うことが多い。クルマが発進しようとした瞬間に、目の前に飛び込んでくるのだ。

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