理想ばかり語るな! 路線バス維持のために「ドライバーの給料を上げろ」は“机上の空論”である【連載】ホンネだらけの公共交通論(4)
- キーワード :
- バス, 路線バス, 2024年問題, ホンネだらけの公共交通論
代替策の検討
バス事業の給料引き上げや財源確保の問題については、先日当媒体で「「当事者が払え」「企業努力が足りない」 日本人はなぜ“公共交通”を税金で支える感覚がないのか?」(2024年3月24日配信)を書いた。
【無料セミナー】「自動車DXサミット vol.3」 三菱ふそう KTC マツダ登壇 Amazonギフトカードプレゼント〈PR〉
詳細は同稿に譲るが、交通税や交通寄付といった方法を真剣に検討する必要があるのだ。あるいは、最近広島市で議論されているバスの官民共同運行システム(路線重複に代表される無駄をなくし、バス会社の協調・協働によって効率を向上させる)のような、いわゆる
「痛み分け」
によってバスを守る新たな方法を考える必要がある。さらに、全国的に広がりつつある客貨混載や、筆者の研究室が試行しているバス会社の空きスペースの地域住民への開放、サウナバスなど、従来とは異なる新たな事業の展開も必要だ。
現在の財政状況で路線バスの運行を確保するためには、交通税や交通寄付、新規事業などによる「上乗せ」、あるいは現行経費の配分替え(例えば車両の代替サイクルの延長や中古車両の増車など)による費用捻出によって、ドライバーの給料を含めた予算を確保することが重要である。
筆者は長年、純電動バスの試作開発に携わってきた。純電動バスは、エンジンバスの3分の1の部品点数しかなく、エコかつオートマチックで、操作も比較的簡単だ。実際、高齢ドライバーの運転支援にも使える。すなわち、SDGs(持続可能な開発目標)を考えると、こうした新技術を活用した人材確保策を検討することも重要だ。
政府や自治体には、交通税や交通寄付のあり方を再検討し、鉄道で議論された上下分離方式など、新たな資金循環方式を検討してもらいたい。バス会社も、上記のような民間企業らしい、新たな事業展開を柔軟に検討する時期に来ているのだ。