日本最大の商業地「日本橋」 江戸の物流拠点としても大きな役割を果たしていた!【連載】江戸モビリティーズのまなざし(20)
- キーワード :
- 江戸モビリティーズのまなざし, モビリティ史
江戸時代の都市における経済活動と移動(モビリティ)に焦点を当て、新しい視点からそのダイナミクスを考察する。
景勝地としての役割
最後に、なぜ日本橋が現在の地にあったかについて、面白い説を紹介したい。
『古地図でわかる! 大江戸まちづくりの不思議と謎』(山本博文/実業之日本社)に、建築史家・桐敷真次郎が提唱した「山当て説」が載っている。それによると、日本橋は北に筑波山、南西に富士山を望むことができる景勝地だった。そのような景観構造を、「山当て」という。
他にも神田山に愛宕山、上野寛永寺や増上寺が立つ高台も背後に控え、江戸の凹凸地形を見事に生かした景観だったという。こうした都市設計が、徳川の権威を誇示するのに役立ったのではないか――と分析している。
家康によって開発された日本橋は、江戸時代約260年を通じ、徳川の権勢を訴え続けた。現在の橋に刻まれた「日本橋」の銘も、最後の将軍・15代慶喜の筆によるものである。
●参考文献
・東京の歴史5 物流の一大拠点・日本橋 増山一成(吉川弘文館)
・近代日本における都市内水運に関する歴史地理学的研究 岡島建(学研)
・古地図でわかる!大江戸まちづくりの不思議と謎 山本博文(実業之日本社)
・江戸東京名所辞典(笠間書院)
・東京の歴史地図帳 谷川彰英監修(宝島社)