EV失速の本質! なぜ物事を「急進的」に進めてはいけないのか
消費者が望まないBEVへの移行を性急に進めようとする人々がいる。そこで本稿では、BEVを題材に、「急進的」であることのリスクを分析する。
インフラ整備の遅れ
●インフラのリスク
身の回りを見渡して、単独で機能する商品は少ない。何らかのエネルギー源は必要だし、インターネットにつながらないパソコンや携帯は、価値が半減する。つまり新商品を発売するためには、それに付随するインフラも整備しなければならないのだが、それには費用も時間もかかる。
Wi-Fiスポットや5Gアンテナの増設は今でも続いている。BEVを走らせるには充電設備と電力供給が必要だが、充電設備が充足しているのは特定の国や地域に限られる。自分が住む地域の整備状況を知らずに買って後悔する人が増えているという。
最も厄介なのは、需要と供給が釣り合わないと大規模停電が起こる、という電力の性質だ。再生可能電力である太陽光や風力発電の出力は天気により変動するので、その変動を適時に吸収できるベース電力が必要であることは広く認識されている。にもかかわらず、ベース電力として適性が高い火力発電はCO2を排出することから、削減が進む。そこで考え出されたのが、
・BEVで使えなくなった劣化バッテリーへの蓄電
・BEVと家庭間で電力を授受する「V2H」
・電力網と電力をやり取りする「V2G」
だが、いずれもBEVが増えなければ十分に機能しないため、効力を発揮するには時間がかかる。ちなみに2023年10月から、中国政府は江蘇省無錫市で小規模なV2Gの実証実験を開始し、2025年までに五つ以上の試験都市で50以上の試験事業を完了させるという。