EV失速の本質! なぜ物事を「急進的」に進めてはいけないのか

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消費者が望まないBEVへの移行を性急に進めようとする人々がいる。そこで本稿では、BEVを題材に、「急進的」であることのリスクを分析する。

技術開発の六つのリスク

米国の2023年の車の乗り換えパターン。PHV/BEVからCV(従来車。ICE + HV)/PHV/BEVへの乗り換え(画像:カリフォルニア大学デービス校交通研究所電気自動車研究センター)
米国の2023年の車の乗り換えパターン。PHV/BEVからCV(従来車。ICE + HV)/PHV/BEVへの乗り換え(画像:カリフォルニア大学デービス校交通研究所電気自動車研究センター)

 今回、リスクを次の六つに分類した。

・品質のリスク
・消費者の信頼を失うリスク
・持続可能性のリスク
・過剰生産のリスク
・サプライチェーンのリスク
・インフラのリスク

これに基づいて、ひとつずつ説明していこう。

●品質のリスク
 技術開発の動機にはニーズ(需要対応)型と、シーズ(提案)型のふたつがある。
テスラはどちらかといえばシーズ型に近い。一方、米国新興のフィスカーやルーシッドは、テスラが開拓したBEV市場を狙ったニーズ型であるため、テスラを上回るBEVを1日でも早く発売する必要がある。

 フィスカーは2016年に創業し2022年にスポーツタイプ多目的車(SUV)型BEVを発売したが、走行中の電源喪失やブレーキの制動力喪失などの致命的な不具合が報告され、米国の金利上昇にともなう需要の落ち込みが重なって販売不振に陥り、日産との提携交渉も決裂して破産の危機が迫る。

●消費者の信頼を失うリスク
 開発を急いだ結果、市場で不具合が多発すれば、消費者は迷惑する。細かい不具合なら我慢できるが、火災・事故・路上故障(走行不能)を経験した消費者は、二度とその企業の車を買わないかもしれない。

 そして、技術の進化とともに故障形態も変化する。例えばコネクティッドカー(インターネットにつながる車)は、常時接続されている自動車会社のサーバーが故障したり、自動車会社が倒産したりすると、車のドアは開かず、始動もできなくなる。そうなると信頼は失墜し、消費者は経済的損失を被る。

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