「私は荷物のように扱われた」 ある“車いすユーザー”が航空会社を訴えたワケ 米国の実態は日本より数段ひどかった?
車いす利用者は、安全かつ尊厳を持って飛行機に乗ることができるべきである。米国運輸省はそのような規制案を発表した。当然のことではないのか。米国における車いす利用者の空の旅の現状を調査した。
再認識される車いすの大切さ

これは日本での出来事だが、ある航空会社が脚の不自由な乗客に
「階段タラップを自力ではって上らせた」
という話が衝撃的に伝えられ、その対応に非難が集中したことがある。しかし、この当事者は、腕を使うのは階段を昇降する手段として、自分には普通のことだとあっけらかんと述べていた。そうはいっても、米国の乗客のなかに
「荷物のように扱われた」
と感じた車いす利用者がいる以上、徹底した意識改革は叫ばれてしかるべきだ。
そして、高所から車いすを投げ落とすのは、完全にアウトだ。車いすを壊さないよう、失くさないよう、大切に取り扱うよう改善を求めるのは当然だ。
しかし、擁護するわけでもないが、別に彼らは、車いすだけをぞんざいに扱っているわけではないと思う。預けたスーツケースに見事な亀裂が入って戻ってきた経験がある筆者からいわせてもらうと、失礼ながら、彼らは
「どんな荷物でもぞんざいに扱う」
のだ。
なので、今回の提言は、
「車いすはスーツケースよりも大事に扱え」
という意味だと読む。何しろ、スーツケースがなくなったり壊れたりしても、不便をこうむるだけで、まあ何とかなる。
しかし、航空会社スタッフがしっかり認識すべきなのは、車いす利用者から車いすを取り上げると、まあなんとか……はならない、ということだ。車いすを失うとどういう事態が起こるのか、車いす利用者の立場に心を寄せて適切な対応をする。そんな意識改革が必要ということだ。
米国での車いすの不適切な取り扱い案件の数が、今回の提言でどれだけ減るのか、はたまた意識改革されることで逆に増えるのか、そして航空各社がどのような改善を進めるのか注目したい。