「私は荷物のように扱われた」 ある“車いすユーザー”が航空会社を訴えたワケ 米国の実態は日本より数段ひどかった?

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車いす利用者は、安全かつ尊厳を持って飛行機に乗ることができるべきである。米国運輸省はそのような規制案を発表した。当然のことではないのか。米国における車いす利用者の空の旅の現状を調査した。

航空会社を相手取った訴訟

フロンティア航空のウェブサイト(画像:フロンティア航空)
フロンティア航空のウェブサイト(画像:フロンティア航空)

 しかし、訴訟事案はまだまだ続く。

 2019年の訴訟でサービス改善を誓ったはずのサウスウエスト航空だが、2022年にさらに深刻な訴訟を起こされている。車いす利用者が、搭乗ブリッジを渡る際の介助をスタッフに願い出たものの断られ、自力で渡ろうとして車いすから転落、半身不随に陥るという不幸な事故が起きている。

 フロンティア航空も、2023年に訴えを起こされている。車いすなしでは生活がままならない障がい者が、手荷物として預けた特注のカスタム車いすを紛失され、戻ってくるまでの数日間、寝たきりの生活を強いられたとしてフロンティア航空を訴えたのだ。この乗客の車いすは、戻ってきたときには壊れてしまっていたという。

 ユナイテッド航空では、スタッフのずさんな車いす介助が起因し、呼吸チューブが外れてしまった大学生が、脳障害を起こし植物状態に陥るという重大な過失を起こしている。スタッフが乗客の車いすを高所から無造作に投げ下ろしている動画をSNSに投稿され、大炎上したのはアメリカン航空だ。

 調べるとほかにもどんどん出てくる。これ以上例をあげると気がめいってくるので、事例はこの辺で切り上げるが、2022年に米運輸省に報告された車いすや医療用スクーターの不適切取り扱い事案は、なんと

「1万1389台」

に上るそうだ。この不適切事案の数は、2023年には1万1527台となっている。

 このような米国の現状から、2月の運輸省の提言は、減ることのない不適切事案への警鐘として発表されたものだ。

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