物流崩壊のカウントダウン? 引っ越し業者に長時間労働を強いてきた社会が生み出す「引っ越し難民」という病理

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「業者を見つけるのがこんなに難しいとは思わなかった」「見積もりすら出してくれなかった」――。引っ越し需要が高まる3月、4月、引っ越したくてもできない「引っ越し難民」が増えている。これは物流崩壊の予兆なのだろうか。

最善手は消費者の行動変容

引っ越しトラックのイメージ(画像:写真AC)
引っ越しトラックのイメージ(画像:写真AC)

 本稿では引っ越し業界を例にしているが、そもそも「引っ越し難民」の問題は物流業界全体に共通する問題である。

 私たちの生活は便利になりすぎた。コンビニエンスストアは弁当から日用品まで、24時間365日、多種多様な商品で私たちを迎えてくれる。Eコマースで注文すれば翌日には届く。

 私たちの便利な日常は、物流関係者の不断の努力によって支えられている。例えば、ブラックフライデーの時期には、Eコマースや通販、小売店の商品輸送量が通常時に比べて大幅に増加する。これを支えているのが、トラックドライバーや倉庫作業員といった物流労働者の長時間労働だ。

 つまり、

「物流労働者に長時間労働を強いるのはやめよう」

というのが、2024年問題でもあるのだ。岸田内閣が推進する「物流革新」政策は、2024年問題への対応策のひとつとして「荷主・消費者の行動変容」を挙げている。

「引っ越し難民」問題を根本的に解決するためには、消費者の行動を変えなければならない。例えば、杓子(しゃくし)定規に4月1日の異動をともなう人事異動を発表するのではなく、1月、8月、11月といった引っ越し業界の閑散期に引っ越しを促すために、2月1日、9月1日、12月1日の異動をともなう人事異動の実施を各社が検討すべきだ。

 断言するが、「引っ越し難民」を解消するために引っ越しドライバーや作業員を増やすことは現実的な対策ではない。なぜなら、人手不足は物流業界に限らず、国内全産業に共通する課題であり、人手不足を解消することは容易ではないからだ。

 現在、引っ越しができないと悩んでいる人は、腹をくくって5月以降の「分散引っ越し」を検討すべきである。そして、「引っ越し難民」問題は物流危機のひとつであることを企業は認識してほしい。会社都合で「引っ越し難民」を作らないためにも、「分散引っ越し」が実現可能な人事異動・転勤のあり方をぜひ検討すべきだ。

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