「ママチャリもっと取り締まれ」「子ども乗せるな」“青切符”導入でさらに高まる声、でも危険な路側帯を走らせていいのか?

キーワード :
,
自転車違反の罰則が自動車違反よりも緩かった背景には、日本独自の自転車文化がある。日本の自転車文化の象徴は、安価なシティサイクル、いわゆる「ママチャリ」である。

日本の「ママチャリ文化」

日本の自転車比率(画像:自転車産業振興協会)
日本の自転車比率(画像:自転車産業振興協会)

 自転車事故の増加を受け、警視庁および各道府県警察では啓発活動を通じて自転車のマナー向上に取り組んでおり、2022年3月には自転車関連の違反や事故が多い地域を

「自転車指導啓発重点地区・路線」

として公表し、啓発活動を強化している。

 また、2022年10月には道路交通法が改正され、信号無視、逆走、酒気帯びなどの道路交通法違反者に対する「赤切符」制度が実施された。それまで自動車やオートバイに適用されていた「赤切符」制度が自転車にも適用されたのである。

 ただし、自動車とオートバイは一度の交付で裁判所に出向き罰金を納める制度だが、自転車の初回は警告のみ。3年以内に2回以上赤切符を切られた場合のみ3時間の違反講習(6000円)を受ける。そのため、状況は改善せず、新たな対策として青切符の導入が決まったのだ。

 自転車の交通マナーが問題になっても改善されない背景には、日本独特の自転車文化がある。道路交通法上、自転車は「軽車両」とされ、歩道と車道が分離されている場合、自転車は原則として車道を左側通行しなければならない。

 歩道を自転車が通行できるのは、「歩道通行可」の標識がある場合か、運転者が13歳未満の子ども、70歳以上の高齢者、体の不自由な人である場合、交通事情によりやむを得ない場合に限られる。

 しかし実際には、歩道を走る自転車が非常に多かった。そこで警察庁は2011年、自転車の歩道通行は例外であり、車道を左側通行する方針を改めて打ち出した。しかし、この方針はなかなか受け入れられず、混乱が広がった。そこで、この方針を受け、各都道府県警は、道路状況を考慮し、無理に車道を走らせるのではなく、車道寄りの歩道をゆっくり走るように指導している。

 本来車道を走るべき自転車が、歩行者と並走する危険性(法律違反の可能性)があるにもかかわらず、歩道を走るのが当たり前になっているのには理由がある。それは、歩道走行に適した安価なシティサイクル、いわゆる

「ママチャリ」

の普及がある。欧米では高価なスポーツタイプの自転車が一般的だが、日本ではママチャリが主流だ。日本自転車産業振興会の調査によると、2021年時点での日本の自転車普及率は以下のようになる。

・シティ車(ママチャリ):61.8%
・電動アシスト車:10.0%(うち電動アシストのシティ車8.0%)
・スポーツ車:9.0%

 ママチャリは、日本で独自に改良・開発された実用車の一種である。その特徴は

・背筋を伸ばした姿勢で乗車できる設計
・ボディフレームをまたげる乗りやすい構造
・停止した時に素早く足をつけられるペダル位置
・買い物かご、チャイルドシートなど多様で実用的な付属品

などがあげられる。

 特に、背筋を伸ばして乗り、素早く地面に足をつけることができるように設計されているため、低速での頻繁な発進・停止に適している。背中を曲げて高速走行することを前提に設計され、トップチューブが三角形でまたぎにくいスポーツ車とはまったく異なるタイプの自転車である。

 ママチャリは、日本の狭い道路や混雑した歩道を歩行者と自転車が一緒に移動しなければならないという現実を受け、進化してきた。

全てのコメントを見る