いきものがかりの聖地「小田急富水駅」 デビュー曲「SAKURA」ミュージックビデオの桜はなかった【連載】移動と文化の交差点(2)

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いきものがかりの「SAKURA」を通して、放送局とミュージックビデオの関係を考える。

「SAKURA」が織り成す郷愁の舞台

小田急線富水駅。2006年撮影(画像:Kouchiumi)
小田急線富水駅。2006年撮影(画像:Kouchiumi)

 旅の季節である。筆者(増淵敏之、文化地理学者)は授業のない季節に、出張で国内外を旅するのが当たり前になっている。2月は高知、苫小牧に行った。3月は盛岡に行く予定だ。目的は主に会議や調査などだ。この春は海外に行く予定がないので、その合間にミュージックビデオ(MV)の「ロケ地巡り」をしようと考えている。

 筆者は1996(平成8)年から2007年まで、ソニー・ミュージックエンタテインメントに勤務していた。その頃、MVはプロモーションビデオ(PV)と呼ばれていた。もともとは曲を売るためのプロモーション用という意味合いだった。いつの間にか呼び方が変わったようだが、本稿ではMVに統一する。

 現在、ビデオは独立した作品であり、ファンがMVのロケ地を訪れるミュージック・ツーリズムが現象化している。人気音楽グループであるいきものがかりに「SAKURA」という曲がある。2006年のデビュー曲で、予想に反して瞬く間にヒットした。NTT「DENPO115」NTT東日本エリアCMソングだった。彼らのレコード会社だったので、ヒットの過程を横から見ていた。

 歌詞には「春の大橋」や「小田急線」が出てくるので、彼らが育った神奈川県の厚木・海老名あたりが舞台であることは間違いない。筆者が新人開発部にいた頃、海老名の商店街前で彼らのストリートライブを見た記憶がある。ボーカルと楽曲のクオリティーの高さが印象的だったが、先にマネジメントと契約したと聞いて交渉は断念した。

「卒業を機に故郷を離れた恋人を思う」

というシチュエーションは歌詞の重要な設定だ。しかし、厚木や海老名は東京から50kmほどしか離れておらず、そのような感覚を初めて知ると同時に、東京の郊外でも「故郷」を感じることを知った。地方出身の筆者は、このような感情や感覚は100~200km以上離れた場所で感じるものだと思っていた。

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