青信号の「フライング秒数」 東京ドライバーはロンドンより5倍も速かった! 急ぎすぎの日本人、事故の本質を考える

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交通事故は他人や自分の命を奪う可能性があり、絶対に避けなければならない。交通事故を引き起こす要因について改めて学んでみよう。

問題解決の舞台裏

日本坂トンネル(画像:写真AC)
日本坂トンネル(画像:写真AC)

「急ぎたい」という心理とも関係するが、見通しが悪いにもかかわらず、少しでも見えれば前に進もうとするドライバーの習性もあるという。

 1979(昭和55)年の東名高速日本坂トンネル事故では、トンネル出口付近でトラックと乗用車7台が玉突き事故を起こして炎上したが、その後も後続の車がトンネルに侵入し続け、173台の車が炎上する大事故となった。後続のドライバーは多少の煙にも「大丈夫だろう」とトンネルに侵入し続け、前進も後退もできない状況になってしまったのだ。

 実際、「トンネル内事故発生、進入禁止」という電光掲示板の情報に対して、

・止まる:40%
・条件付きで止まる:12.1%
・止まらない:10%

だったという調査結果もあり、先に進もうとするドライバーの心理には根強いものがあることがわかる。

 本書によれば、人間の問題解決行動には、

・スキルベース
・ルールベース
・知識ベース

の三つがあるという。

 知識ベースは今までの知識や経験ではすぐには解決できない問題を扱うもので、運転において使われるのは、ほぼ無意識のうちに行われるスキルベースの行動と、一定のルールに従って解決するルールベースの行動になる。

 箸の持ち方や靴ひもの結び方は、多くの人が無意識で行っており、いざ説明しようとすると難しい。自動車の運転もこれに近いものがあり、運転のうまいドライバーは無意識的にさまざまな課題をクリアしていると考えられる。

 しかし、ルールベースの認識が間違っていると、いくらスキルがあっても事故を起こす可能性がある。例えば、黄色信号では、交差点の手前にいる車は交差点に進入しないことがルールだが、なかには黄色になったら加速して赤になる前に通過しようとするドライバーもいる。

 先ほど紹介したケースのように、ここに青信号になる前にフライング気味に発進するという間違ったルールにもとづいて行動するドライバーが居合わせると大きな事故につながるのである。

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