コンテナ海運の大合併時代! 主要企業が10年で半減したワケ
アライアンス再編とコンテナ船社の集約
市場環境の問題に対応すべく、まず始まったのがアライアンス再編だった。より広い範囲で協力を進めることで、より効率的な運営を目指したのである。2012年には日本郵船、ハパッグロイドなどが属していたGAと商船三井や現代商船が入っていたTNWAが欧州航路での共同運航を開始し、G6アライアンスが結成された。
2013年にはマースク、MSC、CMA-CGMの欧州系3社によるP3ネットワークの結成が試みられた。しかし、これは中国商務部の認可が得られず破談となった。これを受けて、マースクとMSCは即座に2015年から10年間の船腹共有協定を結び、2Mアライアンスを結成した。
ちなみに、両社はこれまでアライアンスには入っていなかった。残されたCMA-CGMも中国国有会社のCSCL(中海集装箱運輸)、アラブ系のUASCとの間でオーシャン・スリー(O3)の結成を発表して2015年から主要航路での提携を開始した。今までアライアンスに参加していなかったエバーグリーンも2014年から川崎汽船などが属するCKYHアライアンスに加入した。
規模の拡大によって効率化を推し進めるため、コンテナ海運会社の合併・買収も2014年以降大きく進展した。同年にはハパッグロイドによるCSAV(チリ)買収、ドイツのハンブルクスードによるCCNI(同)買収、CMA-CGMによるドイツ船社ODPR買収が発表された。2015年にはCMA-CGMによるNOL(シンガポール)買収と中国の国有船社であるCOSCOグループとチャイナシッピンググループの各コンテナ船部門(COSCOコンテナラインズとCSCL)の合併が決まった。
2016年にはハパッグロイドによるUASC買収、マースクによるハンブルクスード買収のほか、日本でも、2016年に日本郵船、商船三井、川崎汽船が定期船部門の統合が発表された。統合会社は2017年にONEとして設立され、2018年に営業を開始した。OOCLも2018年にCOSCOに買収された。さらに、2016年8月末には、アライアンスが結成されるようになって初めてとなる主要船社(韓進海運)の破綻も起こった。
合併・買収はさらなるアライアンス再編につながった。UASCやNOL、OOCLの買収は異なるアライアンスに属する企業で起こったため、それぞれの海運会社が別のアライアンスに移る形となり、2M以外のオーシャンアライアンス(OA)、ザ・アライアンス(TA)が2017年4月から開始され、現在の三大アライアンス体制がスタートした。その後、2020年に韓国のHMM(旧現代商船)が2Mとの戦略的提携を解消してTAに加盟した。
これが現在の主要9社、三大アライアンス体制である。1990年代に構築されたアライアンスの仕組みは船舶の大型化を中心とした技術革新や、鉱産物や穀物、タンカー貨物以外の多くの貨物をコンテナで運ぶ輸送の仕組みが成熟したことを受けて変化を迫られていた。
これに加えて金融危機から始まった2010年代の市場環境の悪化に対応するため、スケールメリットを享受すべくアライアンスの再編や企業の合併・買収(M&A)が進展することになったのである。コンテナ輸送は特に船に乗せている間の輸送サービスは同質性が強いと考えられており、運賃競争に陥りやすい。運賃が下がる中で生き残りをかけるため、迅速な対応が進んだといえる。