「EV全振り」しない日本車メーカーは正しかった! だからといって“EV叩き”も筋違い、自動車市場の競争は「政治戦」である
日本車メーカーにとって、EVに全振りするよりも、HVも含めた多様な選択肢を用意することが最適解だ。
日本車メーカーが取るべき重要戦略
私事で恐縮だが、先月1週間、米国からのお客さんを温泉、ラーメン店、ジブリパークに案内する機会があり、そこで最近の米国の政治的分断について直接話を聞いた。
特に、根っからのリベラル派だった知人の米国人男性(私と同年代)がトランプ支持者になった過程を詳しく聞いていたら、支持者になる直前、
「『正しくない存在』に対する米国型リベラルのあまりに軽蔑的な態度」
が火に油を注いだことは間違いないようだ。
もちろん、理想を社会に根付かせるためには、そうした非妥協的な態度がある程度必要なのは理解している。だからこそ、フェーズによって異なるコミュニケーションのスタイルが必要になるのだ。
拙著『日本人のための議論と対話の教科書』(ワニブックス)でも使っている図のように、誰もが問題を否定している段階では、問題解決の必要性を衆知する前に、徹底して妥協しないことが必要だ(「滑走路段階」)。
一方、解決策の必要性が徐々に世間に知られるようになった段階(「飛行段階」)になると、今度は異なる意見を持つ人たちを包摂することが重要になる。
世界の人口の半分にそっぽを向かれないためにも、多様な選択肢を提供し、それぞれの経済状況や政治環境に応じて購入者が選択できる日本車メーカーのスタイルは見直されるべきだろう。
これからのEV市場をめぐる政治戦において、日本車メーカーが取るべき重要な戦略は、
「誰かをディスらない先進性」
というブランディングだろう。