率直に言う 今のグランクラスは“ジリ貧”だ 復活のカギは、自己顕示欲の強い富裕層に向けた「値上げ」である

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グランクラスのサービスの歴史は縮小する一方だ。“お得感”はあるが、リッチな気分はまったくしない。それでいいのか。

「飲食あり」「着席のみ」のわずかな差額

グランクラス(画像:写真AC)
グランクラス(画像:写真AC)

 グランクラスの料金は、

●東京~新函館北斗間(862.5km)
・飲食あり:1万7780円
・着席のみ:1万3600円

●東京~金沢間(450.5km)
・飲食あり:1万5370円
・着席のみ:1万1190円

である。前者の差額は4180円、後者の差額も4180円である。つまり、アテンダントによる飲食などのサービスは4000円ちょっとの価値しかないことにある。サービスの違いの割に、価格差がないのだ。

 このサービス内容でこの値段は破格だ。おいしいお酒(ソフトドリンクも)が飲み放題で、茶菓子や軽食も出るし、おしぼりも用意されている。アテンダントによるサービスもある。それも料金に含まれている。

 要するに、サービスに対して安すぎるのだ。料金を上げなければ抜本的な改善は難しいだろうが、それをしない決断をしたのがグランクラスである。

現代の富裕層が求めているもの

新幹線(画像:写真AC)
新幹線(画像:写真AC)

 私(小林拓矢、フリーライター)のような裕福でない人間には、グランクラスに乗る余裕はない。しかし、たとえ裕福であったとしても、グランクラスにどんどん乗りたいとは思わない。“お得感”はあるが、リッチな気分はまったくしないからだ。

 グランクラスは誰もが憧れる豊かな空間とサービスを提供しているのだろうか。車内の設備は十分すぎるほど整っている。しかし、「飲食あり」のサービスは決して十分ではない。

 現代の富裕層は、おいしい料理やよいサービスを受けたことを見せびらしたがる傾向がある。料金が高ければ高いほど、クオリティーが高ければ高いほど、それを他人に見せびらかしたときに羨望(せんぼう)とリスペクトを集める。

 また、富裕層以外の人たちは、高価なサービスを受けたことが“一生の思い出”になるようなものでない限り、お金を払わない。

 わかりやすい例が、東京・銀座の「すきやばし次郎」だ。日本を代表するすし職人である小野二郎氏(「現代の名工」にも認定されている)が握るすしを食べてみたいと思う人は多いだろう。メニューは5万5000円からのおまかせに限られている。

 しかし、このレストランで食事をした人は、おそらく“一生の思い出”として長く語り継ぐことだろう。すきやばし次郎に行くこと自体で他人に驚かれる。現代の富裕層は、そういうサービスを求めているのだ。

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