三重交通キャラ“性的イメージ”大炎上は全く問題ない! 「表現の自由」を長年取材したルポライターが騒動の本質を問う
閉ざされたSNS空間で拡大する声
そもそも“騒動”は現実世界ではなく、Xを中心としたSNS上で起きている。この閉ざされた世界で、アンチも擁護派も、何らかのテーマを見つけてはののしり合っているだけなのだ。
実際、過去に取材したいくつかのケースでは、アンチと擁護派がインターネット上でののしり合っている一方で、キャラクターや作品関係者に話を聞くと、
「抗議は1件も来ていない」
ということすらあった。
経済学者で、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授の山口真一氏の研究によれば、次のことが判明している。
「炎上1件当たりネットユーザのおよそ0.0015%(約7万人に1人)が書き込んでいる計算になる(山口,2018)。これだけ頻繁に発生している炎上について、たった0.0015%しか書き込んでいないとは驚きだ。しかしこの結果は、2016年に対象者を約4万人に増やして調査した際も、ほとんど変わらなかった。ツイート数から分析した別の分析でも同様の結果が得られている」(『情報社会におけるビジネスとリスク―データ分析が示す「ネット炎上」の実態』)
また、田中辰雄氏と浜屋敏氏の著作『ネットは社会を分断しない』(KADOKAWA、2019年)によれば、10万人を対象とした大規模調査でも次のようなことも明らかになっている。
・ネット上で過激化しているのは「高齢者」
・ネット上の投稿の約半数は「0.23%」の人が書き込んでいる(435人に1人)
・ネット上で接する論客の約4割は、自分と反対の政治傾向の人
ほとんどの人は、意見すら発していないし、怒ってすらいないのである。
では、萌えキャラを使ったキャンペーンだが、アンチの影響は微々たるもので、得られるメリットの方が大きいことを考えると、今後も積極的に実施すべきなのだろうか。
特に利用客の減少に悩む交通事業者にとっては、萌えキャラを使ったキャンペーンは新規顧客の獲得や認知度向上の手段として魅力的である。しかし、キャラクターの魅力だけに頼っていては成功しない。それは、過去の事例が示している。
多くのキャラクターが存在する以上、認知度を高めるのは難しく、人気も一過性になりやすい。交通事業者は、キャラクターを目当てに訪れるファンに、路線や沿線本来の魅力を伝え、リピーターになってもらうことが不可欠だ(もちろん、萌えキャラが苦手な人への配慮も必要である)。