札幌市電の延伸断念 「採算悪」「用地買収難」という理由が極めて近視眼的なワケ
視野が狭い札幌市

宇都宮ライトレール開業の効果は、地価の上昇にも影響している。関東信越国税局が2023年7月に公表した路線価によると、宇都宮ライトレールが発着するJR宇都宮駅東口前ロータリーの路線価が4年連続首位をキープしており、変動率も3.2%増と4年連続で上昇している。
こうした地価の上昇は、自治体経営を考える上では
「税収アップ」
にも直結する話で、路面電車の運賃収入と運行経費の比較という単純な採算性の議論からは見えない話だ。
こうしたことから、近年の鉄道プロジェクトでは、このようなまちづくりや自治体経営への影響も評価できるように、単純な採算性の議論だけではなく、商業や観光、医療や福祉など各行政部門への横断的な影響が評価できるクロスセクター効果分析や、所要時間短縮などの効果をプラスの経済効果として評価できる費用便益分析を合わせて評価するケースが増えている。
一方の、札幌市は、路面電車のJR札幌駅方面への事実上の延伸断念の理由として、
・採算性
・用地買収の困難さ
の2点を挙げた。
JR札幌駅までの路面電車延伸の建設費は最大で106億円かかるとされ、それを主に運賃収入で賄うことは難しいそうだ。さらに、用地買収の困難さについても
「沿線の商業施設への荷物搬入のトラックに支障が出る」
といい、路面電車を延伸し社会的な注目を集めることで沿線の商業施設に集客効果をもたらすといった経済効果に対する視点が欠落している。
なお、札幌市の年間の一般会計予算額は1.1兆円あり、路面電車の延伸の建設費の106億円については負担できない金額ではない(一般会計予算額の0.96%)。なお、宇都宮ライトレールの建設費約686億円については、交付税措置などを活用することで建設費の約2分の1である342億円は国の負担となり宇都宮市の支出額を抑えている。
JR札幌駅前の路面電車延伸について、その半額を国庫負担とすれば53億円で整備が可能であり、地価上昇や社会的な注目、路面電車を都心部の基幹交通とすることでの公共交通活性化などの経済効果を評価すれば、「採算性」と「用地買収の困難さ」を理由とした事実上の延伸断念には疑問符が付く。