札幌市電の延伸断念 「採算悪」「用地買収難」という理由が極めて近視眼的なワケ
2022年9月、札幌市はJR札幌駅方面への市電延伸構想を事実上断念した。直接の理由は採算と用地買収の難しさだ。しかし、これは本当に正しいのだろうか。
検討ミスから生まれた新課題
北海道札幌市は2022年9月、それまで検討を続けてきた路面電車のJR札幌駅方面への延伸を事実上断念した。採算性や用地買収の困難さが断念の直接的な理由で、これに代わるものとして自動運転の水素燃料バスなど新しい交通システムを合わせて検討するとされた。
しかし、札幌市が公表した路面電車延伸の検討資料には、昨今の鉄道プロジェクトで評価項目として盛り込まれている、まちづくりなどへの全体的な経済効果を考慮した
・費用便益分析(所要時間短縮などの効果をプラスの経済効果として評価する方法)
・クロスセクター効果分析(商業や観光、医療や福祉など各行政部門への横断的な影響を評価する方法)
は行われず、単純な運賃や電車広告などの収入と経費の支出の比較のみで採算性が評価されたことなどから、検討内容がずさんだったことが否めない。
こうした背景などから、札幌市の市民団体「札幌LRTの会」では、2023年8月より路面電車のJR札幌駅方面への延伸の検討再開の機運を盛り上げるために、市民向けの路面電車の無料体験乗車会や、宇都宮ライトレールの中尾正俊常務ら有識者を招いたフォーラムを実施している。