いまや激レア? スーパーカーのドアをまとったトヨタ「セラ」という異例の量産車【連載】90’s ノスタルジア・オン・ホイールズ(11)
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1990年代は、バブル崩壊後も未来への夢と希望に満ち、国内の自動車産業も活況を呈していた。本連載では、当時のクルマ文化を探るとともに、興奮を読者に甦らせる。
ショーモデルを忠実に市販化

セラは、その動力性能的には特筆すべき点はなかった。その車重は重量がかさみがちなガラスルーフのワリには1t未満と軽量。エンジンは1.5L/110psと車重に対しては十分だったが、特に速いクルマというわけではなかった。
しかし動力性能は地味でも、そのルックスゆえに街中では常に注目される存在だった。取材先などでも、何度もそのドアを開閉して見せた記憶がある。
とはいえ、これらのイレギュラーなモデルの人気が長く続くはずもなく、しかるべき場所に流通した後、徐々に忘れ去られていったことは否定できない。生産されたのは1990(平成2)年3月から1996年1月までの6年足らず。一部は輸出も行われたがその総生産台数は約1万6800台とわずかだった。
冒頭に記したとおり、セラは本来市販など想定していなかったショーモデルである「AXV-II」を忠実になぞったモデルである。そもそも、
「ショーモデルに大きく手を加えることなく市販化にまでこぎつける」
という例は日本車の長い歴史のなかでもほとんどなく、それも含めてまさしくバブルの産物だったということである。
なお、セラはトヨタのグループ会社であるセントラル自動車(現トヨタ自動車東日本)が設計・量産を担当したが、バタフライウイングドアをはじめとするボディの細部を量産レベルまで完成させるのに相当な苦労があったことは想像に難くない。