台湾の頼政権“反中”継続でも、「台湾有事」の可能性はまだまだ低いワケ

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台湾で次期指導者を選ぶ総統選挙が行われ、頼清徳氏が勝利した。モビリティ企業は今後どのような地政学的リスクに直面するのだろうか。

激変するアジアの海運

経済成長の鈍化イメージ(画像:写真AC)
経済成長の鈍化イメージ(画像:写真AC)

 また、台湾有事となれば世界経済に与える衝撃は計り知れず、グローバル経済に組み込まれる中国も無傷ではいられず、米国などから経済制裁が強化される可能性が高い。

 今日、習政権は

・不動産バブルの崩壊
・経済成長の鈍化
・若年層の失業率
・外資の中国離れ

など多くの経済的課題に直面しており、米国などとの経済関係を必要以上に悪化させたくないのが本音だろう。こういった事情を考慮すれば、頼政権の誕生によって有事のリスクがすぐに高まるわけではない。だが、繰り返しになるが、習政権は武力行使の可能性を排除しておらず、その潜在的脅威は残る。

 イスラエルを巡って中東情勢が緊迫化しているが、イエメン南部を拠点とする親イランのシーア派武装勢力が紅海を航行する民間船舶への攻撃を続けるなか、

・日本郵船
・川崎汽船
・商船三井

の海運大手3社はリスク回避のため、全運航便を対象にアデン湾、紅海の通行を一時的に見合わせることになった。今後、喜望峰経由の迂回を強いられることになり、航行日数や輸送コストが大幅に増えることになるが、台湾有事となれば、台湾周辺海域の航行も難しくなる。

 また、中国が実効支配を強める南シナ海での安全な航行も危ぶまれることになり、マラッカ海峡から南シナ海、バシー海峡から台湾東部をシーレーンとする日本にとっては極めて大きな影響が出ることになる。インドネシアやフィリピン東部を航行するという手段もあるが、かなりのコストをともなう。

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