台湾の頼政権“反中”継続でも、「台湾有事」の可能性はまだまだ低いワケ

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台湾で次期指導者を選ぶ総統選挙が行われ、頼清徳氏が勝利した。モビリティ企業は今後どのような地政学的リスクに直面するのだろうか。

企業に迫る軍事的リスク

アシアナ航空(画像:アシアナ航空)
アシアナ航空(画像:アシアナ航空)

 そして、欧米諸国の要人が台湾を訪問するなど中国を強く刺激するような事態が生じれば、軍事的緊張が一気に高まる恐れもある。

 2022年8月、当時のペロシ米下院議長が台湾を訪問した際、それに強く反発してきた中国は台湾を包囲するように大規模な軍事演習を実施し、大陸側からは弾道ミサイルを台湾周辺海域に打ち込んだ。

 その際、大韓航空やアシアナ航空などは台湾と韓国を結ぶフライトを一時ストップするなど、モビリティ企業にも大きな影響が出た。頼政権下でもこういった軍事的緊張の高まりは十分に考えられる。

 では、企業の懸念が強い台湾有事の行方は今後どうなっていくのか――。

 まず、頼政権になったことで中国がこれまで以上に軍事的圧力を強め、そのまま台湾有事に発展するかというと、その可能性はかなり低い。中国の習政権は台湾統一を歴史的必然と捉え、そのためには武力行使の可能性を排除していないが、それは最後の手段であり、そのハードルは習政権にとっても非常に高い。

 今日、中国軍に台湾へ上陸し、全土を支配下に置ける能力や規模は整備されていないとの見方が専門家の間でも強く、軍事作戦が失敗に終わる可能性が高い。仮にそうなれば、習政権の権威は大きく失墜しすることになり、要は台湾侵攻で失敗は許されないのだ。そういったリスクがあるなか、現状で習政権が軍事作戦に出ることは考えにくい。

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