日本造船に復活の兆し? 2021年の新受注量2.1倍、環境対応船がけん引
温室効果ガス0へ 環境対応船の受注相次ぐ

日本は2050年までに国際海運からの温室効果ガス(GHG)の排出を全体としてゼロにすることを目指しており、IMO(国際海事機関)にもアメリカやイギリスなどと共に世界共通の目標として掲げることを提案している。2021年は、こうした取り組みに沿った環境に配慮した船舶の受注が目立った。
代表的な新船型では、LPGを燃料として使用できる2元燃料(DF)エンジンを搭載したVLGC(大型LPG/アンモニア運搬船)が挙げられる。川崎重工業はENEOSオーシャンや日本郵船から8万6700立方メートル型VLGCを相次いで受注。名村造船所は三菱重工業グループの三菱造船が開発した8万7000立方メートル型VLGCを建造する契約を商船三井グループのフェニックス・タンカーズと結んだ。
LNG(液化天然ガス)を燃料に使用する船舶の受注も進む。
2021年7月には日本シップヤード(NSY)が開発・設計したLNG燃料21万重量トン型ケープサイズバルカー3隻の建造が決まった。JFEスチールが日本郵船、川崎汽船、商船三井のそれぞれと長期連続航海用船契約を締結。NSYに出資するジャパンマリンユナイテッド(JMU)や今治造船で建造される。
LNG燃料自動車船はNSYと新来島どっくが、日本郵船、商船三井、川崎汽船といった大手船社から受注を確保。特に日本郵船は2021年6月に最大7000台積みのLNG燃料自動車船を12隻建造することを発表し、大きな注目を集めた。
好調な海運マーケットや世界的な脱炭素化の動きは既存の船隊を環境対応船へリプレイスする機運を後押しするだろう。
しかし、鋼材価格をはじめとする原材料価格の高騰による船価の上昇は、船主にとっても造船所にとっても良い要素がない。特に造船所は採算性が悪化する上、新造船の受注確保が難しくなる。2022年の新造船マーケットが上向くかは、鋼材価格の行方が鍵を握っていることは間違いない。