日本が誇る「宅配品質」を破壊? アマゾンは「誤配達→廃棄」という愚行をやめるべきだ

キーワード :
,
このままでは、アマゾンが日本の物流、特に貨物自動車運送ビジネスを破壊してしまうかもしれない――。そうした危機感が現在漂っている。

崩壊しつつある日本の宅配品質

軽バン配達員のイメージ(画像:写真AC)
軽バン配達員のイメージ(画像:写真AC)

 宅配は物流全体の数%にすぎない。詳しくは、筆者が当媒体に書いた記事「個人が宅配を始めても「ドライバー不足」は全然解消しない! そもそも「運送 = 宅配」は完全な間違いだった」(2022年10月16日配信)を参照してほしい。

 2022年度、宅配便の取り扱い個数は50億個の大台を超えたが、宅配便の95%は、

・ヤマト運輸
・佐川急便
・日本郵便

の3社が占めており、以下、福山通運、西濃運輸と続く。

 日本の宅配品質、特にヤマト運輸と佐川急便の配送品質は極めて高い。先日、エックス(旧ツイッター)で、とある投稿が話題になった。

 あるとき、佐川急便のドライバーがまだ幼い(と思われる)子どもに荷物を渡そうとせず、「お母さんを呼んで」とかたくなに主張したという。荷物の中身はクリスマスプレゼントだった。配達員は、子どもがいつも品名を確認しているのを知っていたので、クリスマスプレゼントが届いたことを子どもに知らせないように配慮したのだった――。

 これが日本が誇る宅配品質だ。もちろん、すべての宅配ドライバーがここまでの心遣いができるわけではない。しかし、こうした心遣いが日本の宅配サービスの根底にあることは間違いない。日本が誇るべきこの高い宅配品質が、アマゾンの配達を担う一部のふらちな軽バン配達員によって汚されようとしている。

「そうはいっても、たかがアマゾン1社の問題でしょう」

とあなどることはできない。実は先に挙げた宅配便の取り扱い個数に、アマゾンフレックスとデリバリープロバイダなどのアマゾンによる自前物流の取り扱い個数は含まれていないのだ。

 例えば米国では、アマゾンの自前物流が大手宅配業者の取り扱い個数を上回ったとの報道が話題になった。アマゾンの自前物流は約59億個で、UPSは約53億個、フェデックスは約33億個である。アマゾンの日本での配送個数は公表されていないが、いずれヤマト運輸や佐川急便を上回る可能性はある。

 あえて厳しいいい方をすれば、問題になっているモラルハザードを是正しないまま、アマゾンの自前物流が取り扱い個数を拡大すれば、「日本が誇るべき高い宅配品質」は過去のものになりかねない。

全てのコメントを見る