サイバー攻撃対策へ EVにいま迫る新たな“発熱問題”とは何か?【連載】和田憲一郎のモビリティ千思万考(7)

キーワード :
, , ,
国際連合欧州経済委員会は2020年、自動車へのサイバー攻撃対策を義務付ける国際基準(UN規則)を採択。これに伴い各自動車メーカーは今、数十個超のエレクトロニックコントロールユニット(ECU)の集約とそれに伴うECUの“発熱問題”に直面している。

サーマルマネジメント素材が競争激化

放熱シート(画像:積水ポリマテック)
放熱シート(画像:積水ポリマテック)

 対策として、ECU内部の電子デバイスの最高許容温度を上げることが出来れば問題ないが、そう簡単にはいかない。ではどうするかというと、発生する熱を抑えたり、逃がしたりする方法を取ることが多い。

 理科の時間に習った読者も多いと思うが、熱の移動方法は三つある。「対流」、「熱放射」、「熱伝導」である。しかし、筐体の中で対流や熱放射を考えても、スペースがないことからあまり効率的でない。従って、主な熱対策は熱伝導を利用して、アルミ製などのヒートシンクに熱を伝え逃がす方法などが採られている。

 そこで活躍するのがTIM(Thermal Interface Material)と呼ばれている材料である。材料の種別としては、放熱シート、放熱グリス、放熱接着剤など多彩な材料がある。以前、筆者がテスラ モデル3の車両分解を視察した際、統合されたECUは車体全体でたったの4個であった。自動運転機能をつかさどるオートパイロットECUを開けてみると、チップとちょうど相対する反対側に多数のTIM材料が装着されていた。

 さて、世界におけるTIMの主要サプライヤーは、ヘンケル(Henkel)、ハネウェル(Honeywell)、ザ・ダウ・ケミカル(The Dow Chemical)など欧米が主流である。材料系に強い日本企業も参入しているが、メインプレイヤーとしては育っていないようだ。これは携帯電話や他の電子デバイスなどの影響もあるのであろうか。またTIMは特殊材料ということもあり付加価値が高い。おそらく今後は欧米のみならず、台湾、中国などの企業も参入し、レッドオーシャン化するのではないだろうか。

全てのコメントを見る