「負の遺産」を活用した観光まちづくりで、地域は幸せになれるのか?【リレー連載】平和産業としての令和観光論(3)

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コロナ禍や世界各地の戦争を乗り越え、観光が平和と国際協力に与える影響を探るリレー連載。異文化理解や対話の促進を通じて、観光は「平和産業」としてどのような役割を果たすべきかを検証する。

再生のシンボル

わたらせ渓谷鉄道線(画像:写真AC)
わたらせ渓谷鉄道線(画像:写真AC)

 観光は「平和産業」である。

 2023年9月6日、筆者(大塚良治、経営学者)が教授を務める江戸川大学の授業の一環で、Jヴィレッジに宿泊し、福島県浜通りの震災遺構を見学した。

 Jヴィレッジは福島県楢葉(ならは)町と広野町にまたがって立地する。両町とも東日本大震災で役場機能の町外移転を余儀なくされるなど大きな影響を受けた。またJヴィレッジも福島第一原子力発電所事故に伴い2013年6月30日まで、国が管理する原発事故の対応拠点となっていた。スポーツ施設として再開したのは、2018年7月28日のことであった。

 Jヴィレッジはウェブサイトに「再始動することで、交流人口の拡大を図り、福島県の復興を国内外に広く発信していく『ふくしま復興のシンボル』としての使命」があると記す。

 翌日は震災遺構浪江町立請戸小学校(浪江町)を見学した。校舎には津波到達時刻の午後3時37分」のまま針が止まった時計もそのまま残されている。参加した学生からは

「ボロボロになった学校の姿を見て私は衝撃を受けた。今まで普通の生活を送っていた環境が、あの日から全てが失われたと思うととても心が痛んだ。痛みを共有し、どれだけ大きな地震だったのかを世界中の人たちに理解してもらう機会があることに感謝したい」

との感想が聞かれた。

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