なるか「軽EV元年」 三菱K-EVコンセプトXスタイルに見る、普及への展望と課題とは

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「東京オートサロン2022」で三菱自動車が初公開した『K-EVコンセプトXスタイル』。加藤隆雄社長は「EVが使いやすいと感じてもらえる第一歩になる」と意気込んだ。軽自動車から軽EVへの置き換えは進むのか。メリットとデメリットを検証した。

軽EVのメリットと避けられぬデメリット

三菱『K-EVコンセプトXスタイル』は普通充電だけでなく、チャデモ式急速充電にも対応していた(2022年1月、会田肇撮影)。
三菱『K-EVコンセプトXスタイル』は普通充電だけでなく、チャデモ式急速充電にも対応していた(2022年1月、会田肇撮影)。

 中でも軽EVが重要性を増しそうなのがガソリンスタンド過疎地だ。国内のガソリンスタンド数は20年度末に約2万9000店と、1994(平成6)年度のピーク時に比べて半減。一般に市町村内のGS数が3か所以下となっている自治体を“給油所過疎市町村”と呼び、それらは全国に283市町村にのぼる(2015年3月末現在、資源エネルギー庁調べ)。しかもこれらは後継者不足という事情もあって、加速度的に減っていく傾向にあるという。つまり、これらの地域に住む人たちは燃料の給油さえ事欠く状況を迎えているわけだ。

 実は「こうした地域に住む人たちにも受け入れられると考えている」とK-EVコンセプトXスタイルの開発者は話す。軽自動車はもともと地方の重要な足として普及している。それが給油所過疎によってわざわざ給油所を求めて無駄な往復を強いられている市町村が数多く存在する。軽EVなら給油所に行かなくても自宅で充電すればいい。普通充電とはなるものの、20kWhのそれほど大きくない容量であるだけに一晩で満充電にできるし、勤め先に充電スポットが用意されていれば、仕事中に追加充電もできる。これらをうまく回すことで、給油所レスの生活が可能となるのだ。

 しかも、航続距離を長くした高級EVに比べるとバッテリーを含めた車体重量は大幅に軽い。そのため無駄に重い車体を動かす必要もなくなり、環境負荷が低い走行が可能となる。その意味でも軽EVこそ低炭素社会を実現するのに相応しいと言っても差し支えないだろう。

 とはいえ、EVを使うことの大変さも知っておかなければならない。その筆頭がバッテリーを使い果たした後で、充電しながらのドライブを強いられることだ。ご存知のようにEVはガソリンを給油するようにバッテリーを数分で“満タン”にできるわけではない。K-EVコンセプトXスタイルで明らかになっている航続距離170kmからすれば、エアコンなどを使った際の実用航続距離は120~130km程度と見るのが妥当だろう。これは現状の軽自動車から見てもはるかに短い。バッテリーを使い果たし、追加充電をしながらのドライブは正直言って苦痛でしかなく、この状況を踏まえれば、軽EVにすることで行動範囲は一気に狭まると覚悟しなければならないのだ。