舌が喜ぶ特選駅弁! 時刻表をタイムスリップして考える 西日本編【短期連載】令和駅弁ビジネス考(3)
駅弁の時空旅行

筆者(ネルソン三浦、フリーライター)は前回、『駅弁パワーは復活できるか? 時刻表をタイムスリップして考える 東日本編』(2023年12月24日配信)を書いた。ということで、今回は東日本編に引き続き西日本編である。1985(昭和60)年1月時刻表(日本交通公社)の欄外を参考に、駅弁の今昔を比較しながら考察を進めよう。
駅弁には、次のようなカテゴリーわけがあった。
・普通弁当:幕の内弁当のようにご飯と多数のおかずで構成されている弁当
・特殊弁当:メインとなる食材を中心に据えている弁当
地域性や食材の訴求性、作りやすさを考えると、牛肉弁当などの特殊弁当が駅弁になりやすいのではないか。そのぶん、駅弁を買う側にとっては“一発勝負”のようになり、購入時に迷ってしまうのは困ったことである。
中部・北陸エリアの駅弁を旅する

●紀勢本線 松坂駅「元祖特撰牛肉弁当」
元祖特撰牛肉弁当は、創業1895(明治28)年の駅弁のあら竹が、1959(昭和34)年から販売している松坂駅の名物弁当だ。商品開発は、国鉄天王寺管理局が沿線の駅弁事業者に、郷土色を持つ新しい駅弁づくりを競わせたことが発端だという。今も昔も「郷土色を持つ」ことが、駅弁の必須要素なのかもしれない。
ちなみに、元祖特撰牛肉弁当は日本で初めて牛肉を使った、しかもブランド牛を使った弁当となった。また、パッケージにも工夫を凝らしていて、注文時に好みの鉄道掛け紙を選べる。なかには、この鉄道掛け紙目あての鉄道ファンもおり、これも営業戦略の一つだろう。
●北陸本線 敦賀駅「鯛の舞」
鯛の舞は、創業1903年の塩荘による蓮子鯛(レンコダイ)の押しずしだ。地産地消にこだわり、かつ企業秘密とされる酢締めから生み出される弁当は、もはや駅弁というカテゴリーを超越している。
ただ、近年は蓮子鯛の漁獲高が減って原料確保に苦慮しており、若狭湾近海を中心とした日本海産にまで産地を広げているそうだ。材料の入手不可が、地産地消にこだわる駅弁の廃盤へとつながる危惧がある。蓮子鯛の水揚げが増える、あるいは養殖に成功するかしないと、このままでは鯛の舞は絶滅危惧駅弁となるかもしれない。