素人考えでたどり着けない物流不動産ビジネス本当の“旨味”【短期連載】素人に倉庫ビジネスは可能か(3)
物流不動産ビジネスの旨味とは?
約20年前、都内に5000坪の倉庫を借りた物流事業者がいた。ところが、その倉庫に入る貨物を提供するはずだったメーカーが、突然契約をキャンセルした。物流事業者は慌てた。当然だろう、坪4000円としても、月2400万円の賃料がかかるのだ。
物流事業者は、急いで保管できる貨物を求めた。もちろん、5000坪を1社で埋めてくれる荷主を急場しのぎで見つけられるわけもなく、A社は500坪、B社は700坪といった具合で、なんとか倉庫を埋めたのだ。
だが後に、これら窮余の策で営業をかけた顧客とのビジネスが、大きく花開く結果となる。
「あなたのところ、倉庫だけじゃなくて、運送もやっていたよね?配送も相談できるかな?」「○○の流通加工を行いたい。あなたのところで相談できないだろうか?」──同社には、このような相談が、預かった貨物の荷主から次第に寄せられるようになった。
倉庫とは、ただ単にものを保管するだけの場所ではない。中には、製造されてから販売されるまでのタイムラグを埋める時間調整の場としてしか倉庫を捉えていない人もいるが、それは大間違いだ。
現在の倉庫は、単なる保管の場に留まらず、流通加工や包装など、製品に対し付加価値を付与することで、製品の価値そのものを高める機能であったり、サプライチェーンの中において、より戦略的かつ効果的に製品を消費者に届ける機能などを求められることが多くなってきている。
倉庫とは、ビジネスを生みだす畑なのだ。倉庫という畑のもとで、さまざまなビジネスが花開き、拡大していく。物流不動産ビジネスの旨味は、ビジネスの可能性を拡大できることにあるのだ。
本稿では、3話に分けて、「素人に倉庫ビジネスは可能なのか?」をテーマに考えてきた。結論を言えば、素人のままでは、倉庫ビジネスは難しい。だが、参入への障壁は高いものの、倉庫ビジネスを学び、物流不動産ビジネスを学び、そして物流ビジネスに真っ向から取り組む覚悟を決めれば、倉庫はあなたにとって、とても魅力的なビジネスフィールドとなるはずである。