日本の空なのに自由に飛べない 米軍に支配された「横田空域」という国家病理
制約の背後に潜むもの

首都圏を中心とした関東甲信越地方に広がる米軍管理空域「横田空域」。その目的は何なのか。
横田空域は正式には「横田進入管制区」という。これは、東京の横田基地と神奈川県の厚木基地から離着陸する米軍機などを管理する空域である。
・東京都
・埼玉県
・群馬県
・栃木県
・神奈川県
・福島県
・新潟県
・長野県
・山梨県
・静岡県
の1都9県にまたがり、米軍管理下の各エリアの最低高度は2450m、最高高度は7000mである。
その特殊性は、「日本の主権が及ばない」という事実にある。日本本土の上空ではあるが、日本の航空機は自由に飛ぶことができない。禁止はされていないが、計器飛行の民間機は許可なく飛行できないなどの制限がある。また、空域内の飛行経路の設定には米軍との協議も必要となる。いわば
「占領された空域」
なのだ。
米軍との空の共存

横田空域の歴史は、日本の“敗戦”と密接に結びついている。日本を統治下に置いていた連合国軍総司令部(GHQ)は「航空禁止令」を出し、日本のすべての航空産業の停止を命じた。それ以来、日本の航空交通管制は米軍の管理下に置かれることになった。
1952(昭和27)年、サンフランシスコ平和条約と同時に日米安全保障条約が発効し、ようやく状況は変わった。安保条約と同時に締結された「航空交通管制に関する取極」では、将来的に航空交通管制を日本側に移管することが合意された。
これを受けて日本は管制職員の要請を開始し、1959年7月には東京管制センターが米軍から引き渡され、日本の“空の主権”が回復した。
このとき、横田空域の管制は「一時的な措置」として米軍の管理下に残された。以来、現在に至るまで、首都を含む広大な空域が作られ、米軍は日本の法律による制限を受けることなく、あらゆる軍事演習を行うことができる。