多摩ニュータウン「再生本格化」 その背景にあった、車道・歩道が交差しない「歩車分離」の誤算
東京西部の多摩ニュータウンの再生が本格化している。その背景には一体何があるのか。
MaaSの導入が不可欠
こうしたなか、多摩ニュータウンの再生を重視する理由は、再発展の可能性にある。多摩ニュータウンの中心部近く、神奈川県相模原市のJR橋本駅近くには、リニア中央新幹線の神奈川県駅(仮称)が開業予定だ。東京都は、リニア駅に近いという利点を生かして企業誘致を進め、地域再生に貢献することを検討している。
企業誘致を軸とした職住近接の街づくりは、再生策の中心的な役割を担うものと考えられる。特にコロナ禍以降、テレワークの普及で職住近接の価値が高まっている。その先進事例として注目されているのが千葉県佐倉市のユーカリが丘だ。
ユーカリが丘は成長管理型のまちづくりで知られ、ニュータウンでありながら衰退していない。コロナ禍以前から、テレワークの普及など将来を見据えたビジネス街づくりが進められていた。多摩ニュータウンにおいても、職住近接のための市街地の再設計は、市街地のコンパクト化とともに重要な課題となっていくだろう。
それにともない、次世代移動サービス「MaaS(マース)」の導入も不可欠となる。前述の東京都の会合でも、移動手段の確保として自動運転バスの導入が提起された。
これまでに小田急や神奈川中央交通などが多摩ニュータウンで自動運転バスの実証実験を行っており、神奈川中央交通などが2019年に行った実証実験では、多摩市豊ケ丘四丁目から近隣のスーパーまでの1.4km区間を運行した。
路線バスに比べ、自宅近くを走るなどきめ細かなサービスを提供できる自動運転バスは、多摩ニュータウンの重要な交通手段になることは間違いない。早期の実用化が期待される。