「EV」が日本で普及しない超シンプルな理由 航続距離? 充電インフラ? いやいや違います

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なぜ日本ではEVが普及しないのか。さまざまな理由が挙げられるが、結局、車両価格が高いからだろう。

低迷するGDP

景気低迷のイメージ(画像:写真AC)
景気低迷のイメージ(画像:写真AC)

 2023年10月に発表された国際通貨基金(IMF)の最新予測によると、2023年の日本の名目GDPはドルベースで前年比0.2%減の4兆2308億ドル(約633兆円)となり、ドイツ(4兆4290億ドル、8.4%増)に抜かれ、4位に転落した。

 名目GDPとは、一定期間に国内で生産された商品やサービスの総額を、その時点の市場価格で評価したものだ。ドイツの人口は日本の約3分の2である。そんなドイツに抜かれた事実を軽く見てはいけない。かつて日本は経済成長によって世界第2位の経済大国の地位を確立したが、1990年代以降の景気低迷により成長は鈍化し、2010年には中国に抜かれた。現在、中国の名目GDPは17兆7090億ドルに達し、日本は4倍近い差をつけられている。

 経済の低迷は、日本市場をグローバルな開発競争の優先順位から引き下げている。購買力が落ちた日本は、メーカー各社にとって最新のEVを投入して利益を得る場所ではなくなりつつある。世界各国のメーカーは、投資を効率よく回収できる北米や中国、欧州などの成長市場へ最新の技術を優先的に投入し、日本には過去の技術を流用した安価なモデルを供給し続けるという判断を下す。

 日本経済研究センターが12月18日に発表した推計によると、経済成長は低迷を続け、ひとり当たり名目GDPは2031年には韓国を、2033年には台湾を下回るという。この予測は、日本が最新の技術を享受できる立場を失い、世界で古くなった技術を使い回して生活をしのぐだけの場所になる未来を裏付けている。

日本の経済課題

景気低迷のイメージ(画像:写真AC)
景気低迷のイメージ(画像:写真AC)

 これに可処分所得、つまり個人が自由に使える手取り収入の伸び悩みが加わる。2000(平成12)年から2021年にかけて、可処分所得は米国で約2.6倍、欧州で約1.6倍に増加した。それに対し、日本はほぼ横ばいにとどまった。他国と比べて物価が安いという事実は、もはや何の慰めにもならない。

 収入が増えない一方で、物価高を反映してエンゲル係数(世帯消費支出に占める食費の割合)は、2023年1月から8月までの平均で27.3%まで上昇している。生活に不可欠な食費が家計を圧迫すれば、車両の購入費用や維持費を捻出することは難しくなる。今後、経済成長が期待できないだけでなく、十分に食べていけるかどうかさえ心配な状況になりつつある。

 今、日本で起きているのは移動における二極化だ。高額なEVを購入し、自宅の太陽光発電でエネルギーを賄える富裕層と、高騰する燃料代に耐えながら安価な中古のHVを使い続ける庶民との間で、生活の質に大きな差が生まれている。かつては誰もが最新の製品を享受できたが、現在は最先端の技術が一部の層だけの特権となり、大衆にとっては手が届かない贅沢品へと変質した。

 航続距離が短いことや、電力供給インフラの不足も普及を妨げている要因であることは間違いない。しかし、結局のところ、日本人がEVを買えなくなっていることが最大の要因である。ブルジョアでもない限り、一般庶民に新しい時代の移動手段へ投資する余裕などまったくないのだ。

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