2022年のモビリティ業界「3つのグローバルリスク」 全ては米中の関係次第?

キーワード :
2022年も多くの地政学リスクが企業の経済活動に影響を与える可能性がある。自動車をはじめとしたモビリティ業界におけるグローバルリスクを考えてみたい。

半導体もやはり米中関係に帰結?

 2つ目として、半導体不足の問題だ。トランプ政権時代の中国半導体企業への制裁に加え、コロナ禍による半導体需要の拡大もあり、世界では半導体不足が大きな問題となっている。電化製品を売る日本の店舗でも冷蔵庫や洗濯機などの品薄が顕著になっているという。

 日本政府は、台湾のTSMCとソニーが熊本県に建設予定の半導体工場に大規模な資金援助を発表したが、米中対立が今年も続くなか、世界の半導体需要がさらに拡大し、その獲得競争がいっそう激しくなる可能性がある。バイデン政権もまた半導体など重要品目のサプライチェーン強化を進めており、脱中国化を鮮明にしている。このように、企業としては米中対立の行方による半導体産業への影響を注視していく必要がある。

 3つ目に、日中関係である。日本にとって中国が最大の貿易相手国で、今日も多くの日本企業が進出している。しかし、米中対立の長期化によって日本は難しい立場に追いやられる可能性がある。

 日本の外交・安全保障上は日米関係を基軸としており、米国陣営の側からどう中国と付き合っていくかが実際の問題となる。両国と上手くやっていくのが理想ではあるが、米中対立が激しくなれば、中国は日本がどのような対応を示すかを注視するようになり、日本政府の歯車が狂った際には中国が日本に厳しい姿勢を見せるかも知れない。

 実際、そういった過去がある。たとえば、2010年9月、尖閣諸島で中国漁船と海上保安庁の巡視船が衝突して中国人船長が逮捕されたことをきっかけに、中国は対抗措置として日本向けのレアアースの輸出停止・制限に乗り出した。また、2005年に当時の小泉首相が靖国神社を参拝したことにより、中国では反日感情が高まり各地で日本製品の不買運動が発生、2012年には日本政府が尖閣諸島国有化を宣言すると、中国各地で反日デモが拡大し、パナソニックの工場やトヨタの販売店などが放火され、日系のスーパーや百貨店などが破壊や略奪の被害に遭った。

 今日の岸田政権にとって、米中対立の中でどう中国と関係を維持、発展させていくかは最大の外交課題と言っていいだろう。しかし、その歯車が狂った際には日中関係が不安定化し、経済的な影響が出てくる可能性が十分にある。

 人権デューデリジェンス、半導体不足、日中関係の行方についてそのリスクを紹介したが、要は全て米中対立が基軸となる。今年も米中対立から目が離せない状況が続くことになりそうだ。

全てのコメントを見る