2019年消滅「宇高航路」再開の可能性ある? 地元からは渋い反応、瀬戸大橋に翻弄されたフェリー経済とその未来

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2019年、最後のフェリー会社が撤退し、宇高航路は事実上消滅した。かつては本州と四国を結ぶ大動脈であり、今でも航路再開を求める声がある。航路が消えた町は今どうなっているのか。

港の新たな価値

人の少ない宇野駅。宇野線は減便が続き、公共交通としての利便性は低下している(画像:昼間たかし)
人の少ない宇野駅。宇野線は減便が続き、公共交通としての利便性は低下している(画像:昼間たかし)

 実際、バスの乗客は筆者以外全員外国人だった。彼らはバスを降りると、そのまま直島行きのフェリー乗り場へと向かった。

 直島はベネッセコーポレーション(岡山市)が運営する美術館を擁するアートを基軸とした観光島である。島は香川県に属しているが、最寄りの港は宇野港である。

 近年、瀬戸内海の島々では、トリエンナーレ形式で開催される「瀬戸内国際芸術祭」など、風光明媚(めいび)な土地とともにアートを鑑賞できるイベントにより、インバウンド需要が高まっている。その影響か、空き店舗が目立っていた宇野でも、おしゃれな雰囲気の店が増えつつある。

 宇高航路は過去のものとなり、宇野港の価値は

「観光地の交通結節点」

にシフトした。このことは、宇高航路を通じて強い絆で結ばれていた玉野市と高松市が、徐々に関係を失いつつあったことを浮き彫りにしている。

 廃止が議論されていた当時、宇高航路の存在意義は、瀬戸大橋が災害などで通行不能になった場合の代替ルートとして維持することにあった。また、瀬戸大橋を通れないクレーンなどの大型産業機械の輸送にも欠かせないルートでもあった。にもかかわらず、運航会社が要求する支援額の増額に消極的だったのは、実際には航路がもはや重要視されていなかったことを示唆している。

 もし、航路再開の見込みがあるのなら、運航会社側が再開のメリットを行政に提示することが求められるだろう。

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