交通業界「100年に一度の大変革」ってそもそも何? 1920年頃を振り返って見えた“根拠”とは

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交通業界でしばしば聞かれる「100年に一度の大変革」。今、声高に叫ばれるこの言葉の根拠は一体何か? 100年前の1920年頃と現在を比べることで、モビリティが迫られる必然的変革が見えてきた。

きっかけはトヨタ社長のメッセージ?

2021年12月14日に開かれたトヨタのEV戦略発表会(画像:トヨタ自動車)。
2021年12月14日に開かれたトヨタのEV戦略発表会(画像:トヨタ自動車)。

 近年交通業界では、「100年に一度の大変革」ともいうべきモビリティ変革が起きていると言われるが、その根拠は何か。そもそも100年前にいったい何があったのか。こうした疑問に対して明確に答えた情報は案外少ない。

 そこで今回は、約100年前の1920(大正9)年頃ごろにさかのぼり、当時どのようなモビリティ変革があったのかを、あらためて探ってみよう。

 日本で「100年に一度の大変革」が話題になったのは、どうもトヨタ自動車の豊田章男社長の言葉がきっかけだったようだ。豊田社長は、2018年10月に「100年に一度の大変革の時代を生き抜くために」と題したメッセージで、以下のように述べている。

「約100年前、米国に1,500万頭いたとされる馬は、現在では1,500万台の自動車に置き換わりました。いまはその時と同じか、それ以上のパラダイムチェンジを迎えているのではないでしょうか。まさに自動車業界は『100年に一度の大変革の時代』に入っていると、日々実感しています。」

 冒頭の馬の話は、アメリカのガソリン自動車「フォードT型」の話と重なる部分がある。「フォードT型」は、自動車が急激に普及するきっかけになった大衆車で、19年間の製造期間(1908年~1927年)に約1,500万台生産された。この数は、当時のアメリカにおける馬車の数に相当するので、馬車が自動車に置き換えられたと言われる。

 おそらく豊田社長は、自動車メーカーのトップであるがゆえに、他社の名前や車種を限定する言い方を避け、「馬が自動車に置き換わった」という話をピックアップしたのだろう。

 ここまでの話は、自動車の歴史をご存知の読者方の多くはお気づきだろう。「フォードT型」は、ベルトコンベアを用いた大量生産によって低価格化を図った大衆車であり、自動車の歴史を語る上で欠かせない画期的な存在だからだ。

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